「バナー広告職人」はAIに駆逐されるのか オタ恋、チョコザップから見えるヒント:人間の技術(1/3 ページ)
コストパフォーマンスに優れる生成AIは、人間がやっていた広告クリエイティブの仕事にどこまで入り込むのだろうか。リスクも見逃してはならない。
エイチエムシステムズ(東京都新宿区)が運営するオンラインマッチングアプリ「オタ恋」は、StableDiffusionという画像生成AIを巧みに利用している。
同社はAIを駆使して数多くの広告クリエイティブを生成し、2023年半ばから広告コンテンツをX(旧:Twitter)中心に展開している。
Googleの検索ボリューム推移を示す「GoogleTrends」を見ると、「ユーブライド」や「ゼクシィ縁結び」のような婚活サービスが検索ボリュームを減らしている。そうした中ターゲットを「オタク」に絞ったオタ恋は、生成AIを活用した広告が話題になった23年中頃から急激に認知度が高まり、足元ではマッチングアプリ中堅の「Dine」と検索ボリュームで肩を並べている。
同社はAIを活用したクリエイティブが効果を発揮したことによって、有名なタレントやイラストレーターなどの力を借りずともユーザー基盤を数倍に伸ばすことに成功している。本来オタク向けというニッチなはずのサービスが、業界全体のシェア構造にまで切り込みつつある様子が垣間みえ、AI広告の威力を思い知らされる。
では、今後生成AIによって人間が行っていた広告クリエイティブに関わる仕事は、AIに取って代わられてしまうのだろうか。
CMにAIタレントも……人間の仕事は奪われるのか?
伊藤園が「お〜いお茶」のCMにAIタレントを抜擢(ばってき)したことも大きな話題となっている。本CMに出演したAIタレントはもはや生成AI黎明期のような、指が6本あったり、本来存在しないはずの関節があったり、といった悪い意味での「AIらしさ」は皆無だ。
コスト面でも、生成AIの広告はタレントのキャスティング費用がかからず、スタジオでの収録やスタッフの人員コストも大幅にカットできる。もちろん、起用したタレントのスキャンダルのリスクも回避できる。今後も広告業界におけるAI活用は増加の一途をたどるだろう。
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