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悲しいほど売れなかった「刻みのりハサミ」、“名前を変えただけ”で100万本超の大ヒット商品に(2/4 ページ)

「見方を変える」だけで商品価値が劇的に変わる──。新潟の中小企業が仕掛けた、売れないハサミを大ヒット商品に変えた逆転のマーケティング戦略とは。

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低迷商品が大化け きっかけは「取引先の奥様」

 この商品は当初、全く異なる用途を想定して売ろうとしていた。アーネストは2005年2月、同商品を「きざみ海苔ができます!」という商品名で発売。そばやお好み焼きなどに使えるきざみ海苔(のり)を、必要な分だけ手軽に作れるハサミとして打ち出した。


「切り口」を変えたことで大ヒットした(提供:アーネスト)

 しかし、使用シーンが限定的なことに加え、市販のきざみ海苔が安価だったこともあり、発売から1年間の販売数はわずか7000本。商品の廃番も検討せざるを得ない状況となる。「刻みのりを切るためだけに、刻みのりよりも高いハサミを買う人はあまりいませんでした」と、営業部広報販促課の高橋俊介氏は苦笑する。


刃をさらに増やしたモデルも(提供:アーネスト)

 だが転機は思わぬところからやってきた。営業担当者が取引先を訪問した際、「妻が届いたDMやレシートの処理にこのハサミを使っている。手軽に使えて重宝している」という話を耳にしたのだ。

 時あたかも2005年は個人情報保護法が全面施行された年だった。企業だけでなく、一般家庭でも個人情報の取り扱いへの意識が高まっていた時期だ。社内で即座に方向転換を決断し、グリップの色を変え、パッケージデザインを一新。「秘密を守りきります!」として2006年1月に再デビュー。販売数は初年度で20万本、前身モデルの約28倍という驚異的な数字を記録した。商品の見せ方の“切り口” を変えたことで販売数は一気に跳ね上がった形だ。


今では多彩なバリエーションを展開している(提供:アーネスト)

 「一時は品切れが続くほどの人気でした」と高橋氏。その後、多くのメーカーが類似品を投入したが、「きざみ海苔用からシュレッダーへ」という商品開発の裏話は同社ならではのストーリーだ。

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