なぜ「OJT」ばかりの企業に若者は定着しないのか? 上司が部下育成を勘違いする理由:「キレイごとナシ」のマネジメント論(2/5 ページ)
「うちはOJTで育てる」と胸を張る企業がある。OJTとはOn-the-Job Trainingの略で、現場で実務を通じて部下を育てるやり方だ。一見すると効率的で理にかなっている。しかし、このOJT偏重の企業は、実のところ若者の定着率が低いようだ。
そもそもOJTとは? OFF-JTとの違いは?
OJTとはOn-the-Job Trainingの略で、文字通り業務をしながら学ぶトレーニング方法だ。一方OFF-JTとはOff-the-Job Trainingの略で、通常業務から離れて行う研修を指す。外部セミナーへの参加や社内での集合研修などがこれにあたる。
政府が発表した中小企業白書2024によれば、人材育成の取組を「増やした」企業では中核人材・業務人材の定着率が高い傾向にあったという。この調査結果は、育成強化が定着率をアップさせる可能性を強く示している。
とりわけ注目すべきは、OJTとOFF-JTの組み合わせ効果だ。社員の定着率が5割以上の企業では、「OJTのみ」よりも「OJT+OFF-JT」と回答した企業が多いという。社外研修などの「OFF-JT」の重要性が近年高まっている証拠である。
また、定着率の高い企業ほど育成期間を長めに設けるという。これらの調査結果は、計画的かつ多面的な人材育成が若者の定着率をアップさせることを物語っている。
OJTという名のダメ出し? 新入社員が落胆した理由
「OJT」という言葉は多くの日本企業で重宝されている。しかし、その本来の意味が誤解され、形骸化している企業も多い。
上司の最も大きな勘違いは「OJTさえやっていれば、部下は育つ」という思い込みだ。なぜなら自分自身もそのようにOJTでしか仕事を教えられていないからだ。
何事もそうだが、「私たちの世代がこうだったんだから、今の世代だって同じでいい」という発想は極めてリスキーだ。本質的な考えや、原理原則はそうであっても、「やり方」は時代に合わせて変えたほうがいい。
ある新入社員が、こんな悩みを私に打ち明けた。
「入社してから3カ月、上司から『OJTで育てるから』と言われましたが、実際には何も教えてもらえません。たまに『誰に教えてもらった?』『そんなことも分からないのか?』とダメ出しされますが、あれがOJTなんでしょうか?」
私は返す言葉が見つからなかった。
「とりあえずやってみて」
「自分なりに考えてみて」
このような言葉を上司から投げかけられた経験は、誰でもあるだろう。何の基礎知識も技術も教えないまま現場で実践させようとするやり方は、今なお多くの職場にまんえんしているのだ。
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