なぜ「OJT」ばかりの企業に若者は定着しないのか? 上司が部下育成を勘違いする理由:「キレイごとナシ」のマネジメント論(3/5 ページ)
「うちはOJTで育てる」と胸を張る企業がある。OJTとはOn-the-Job Trainingの略で、現場で実務を通じて部下を育てるやり方だ。一見すると効率的で理にかなっている。しかし、このOJT偏重の企業は、実のところ若者の定着率が低いようだ。
そもそも教えるとは? 必要な3つの要素
そもそも誰かに何かを教える場合、教える人には次の3つの要素が不可欠だ。
- 体系的な理解
- 言語化能力
- 教え方の技術
第1に、「体系的な理解」である。
教えるテーマについて全体像を把握し、論理的に整理されていなければならない。例えば営業のやり方を教えるなら、アプローチから契約、アフターフォローまでの流れ、そして各段階で必要なスキルなど、全体像をしっかり把握している必要がある。
第2に、「言語化能力」だ。
いくら自分ができても、それを言葉にできなければ教えられない。例えばラジオ体操をやる時、音楽に合わせて体は自然と動く。しかし「右手を上げながら、左足を45度開き、同時に……」と言葉を使って説明するのは難しい。こうした言語化能力も教える側には求められるのだ。
第3に、「教え方の技術」である。
どんな順序で、どんな例を使い、どのように伝えれば相手が理解しやすいか。特に「順序」が最も重要な要素だ。ある程度の基礎的な知識・スキルが身に付いてもいないのに、次のレベルのことを教えてはならない。実績のある上司でも、教え方が下手な人は多い。相手の理解度に合わせて説明の仕方を変える柔軟性も必要だ。
ここで私自身の経験を振り返ってみたい。
30歳前後のころに絵を習いたくて、絵画サークルに通ったことがある。ところがそのサークルでは、先生から「自由に描いてみなさい」「あなたの思うように描けばいいんです」と言われるばかりで、筆の持ち方や色の付け方といった基礎を何も教えてくれなかった。
結果として描かれたのは、恥ずかしくて誰にも見せたくないような絵ばかり。先生や他の生徒からフィードバック(いわゆるこれがOJT)はあっても、そもそも基礎的な知識がないのだから、上達しようがない。結局、私は3カ月でスクールを辞めてしまった。
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