「前にも言ったよね」が職場を壊す――部下が動き出す“言い換えマネジメント”の技術:「キレイごとナシ」のマネジメント論(3/5 ページ)
同じミス、遅い進行、伝わらない指示──その原因は上司の“ひと言”かもしれない。部下のやる気を奪わず、自然と動かす言葉の選び方とは? トップコンサルタントが教える、職場の空気を変えるマネジメントの言語戦略。
単純な言い換えは嫌味にしか聞こえない
では、どう言い換えればいいのか。ちまたではさまざまな言い換えテクニックが紹介されている。
例えば「前にも言ったよね」を「今やっていることに集中しているんだね」と言い換える。「時間がかかりすぎじゃない?」を「丁寧な仕事を心がけているんだね」と言い換える――といった調子だ。
一見、優しい言い方に見える。しかし現実はどうか。ほとんどの場合、単なる嫌味にしか聞こえないだろう。
私がコンサルティングしていた企業で、実際にこのような言い換えを試した課長がいた。部下の反応は冷ややかだった。それはなぜか?
言葉だけ変えても、上司のいら立ちや不満は声のトーンや表情に現れるからだ。部下は敏感にそれを察知する。
若い世代は、タイパ(タイムパフォーマンス)を重視する。回りくどい言い方より、ストレートな表現を好むケースもあるのだ。「はっきり言ってくれた方がいい」という意見も多い。
相手の性格に応じて対応を変える
ここで重要なのは、部下の性格を見極めることだ。人は大きく2つのタイプに分けられる。
- ポジティブで鈍感なタイプ
- ネガティブで敏感なタイプ
それぞれに適した接し方がある。画一的なアプローチでは失敗する。
まずポジティブで鈍感なタイプについて解説しよう。このタイプの特徴は、失敗を深刻に捉えない。注意されてもケロッとしている。忘れっぽく、同じミスを繰り返す傾向がある。
このタイプには、はっきりと、しかし優しく伝えることだ。「うっかり」と「てっきり」という2つのキーワードを活用する。
「前の打ち合わせで工程表の話をしたけど、うっかり忘れちゃった?」
「てっきり2時間で終わると思ってたけど、何か困ってることある?」
このように、相手を責めずに事実を確認する。ポイントは繰り返すことだ。1回では忘れる。2回、3回と優しく伝える。「ああ、すみません。うっかりしてました」という反応が返ってくる。
上司はイラッとするかもしれない。しかしこのタイプは悪意がない。単純に忘れているだけだ。根気強く接することが重要だ。
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