「前にも言ったよね」が職場を壊す――部下が動き出す“言い換えマネジメント”の技術:「キレイごとナシ」のマネジメント論(4/5 ページ)
同じミス、遅い進行、伝わらない指示──その原因は上司の“ひと言”かもしれない。部下のやる気を奪わず、自然と動かす言葉の選び方とは? トップコンサルタントが教える、職場の空気を変えるマネジメントの言語戦略。
「マイフレンド・ジョン」テクニックの威力
次に、ネガティブで敏感なタイプへの対応を解説する。このタイプは批判に過敏に反応する。自己肯定感が低く、すぐに落ち込む。直接的な指摘は逆効果だ。
ここで有効なのが「マイフレンド・ジョン」というテクニックだ。私の友人ジョンの話をするように、第三者のエピソードを活用して伝える方法である。
例えばこんな具合だ。
「私の知り合いの部長が悩んでてさ。部下に仕事を依頼しても、いつも認識がズレるんだって。本人は一生懸命やってるみたいだけど、なかなか改善しない」
ここで重要なのは、必ず自分を下げることだ。
「実は私も社長によく言われるんだよ。『君は本当に認識が合ってないね』『前に言ったじゃないか。何度言ったら分かるんだ』って。気を付けなきゃと思ってるんだけど、なかなか難しくて」
このように自己開示することで、相手の警戒心を解く。すると部下から「課長、実は私もそういうことがあります」という反応が返ってくる。
マイフレンド・ジョンの効果は絶大だ。直接的な批判ではないため、相手は素直に受け入れる。自分事として捉え、改善への意欲が生まれる。
ただし、使い方を間違えると逆効果になる。「こういう人がいて、ダメなんだよね」という批判的な話し方はNGだ。「それって私のことですか?」とかんぐられるからだ。
認識のズレを防ぐ3つの確認ポイント
上司としては、そもそも「前にも言ったよね」「時間がかかりすぎ」などと注意する状況を作らないことが理想だ。認識のズレを防ぐには、以下の3つのポイントを意識しよう。
目的の共有
この仕事の目的は何か? 最終的に何を実現したいのか。背景も含めて説明する。
期待値の明確化
どのレベルの成果物を求めているのか。具体例を示しながらゴールイメージを共有する。単なる指示だけだと、意外と伝わらない。
期限の設定
いつまでに完成させるのか。中間報告のタイミングも決める。少し時間がかかりそうであれば、マイルストーンも決めよう。そうすればお互い進捗を確認しやすくなる。
これらをテキスト化することも重要だ。口頭だけでは忘れる。メールやSlackなどのビジネスチャットで残しておく。後から確認できる状態にすると、認識のズレは大幅に減るはずだ。
ある製造業の部長は、この方法で部下のミスが激減したという。「確認の手間はかかるが、やり直しの時間を考えれば効率的だ」と語る。
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