「後はやっとくね」が部下をつぶす――令和のマネジメントに潜む“やさしい絶望”:「キレイごとナシ」のマネジメント論(2/4 ページ)
フィードバックを途中で終える“優しすぎる上司”が、若手の成長機会を奪ってしまう実態に迫る。
明確なゴールと曖昧なゴールの決定的な違い
まず理解すべきは、仕事の依頼には「明確なゴール」と「曖昧(あいまい)なゴール」があることだ。
明確なゴールの場合を考えてみよう。例えば「3カ月後のイベントに課長以上の役職者を20人集めてほしい」という依頼だ。この場合、あるべき姿は非常に分かりやすい。上司が見ても部下が見ても、目標達成できているかどうかは一目瞭然。20人集まれば達成。集まらなければ未達成である。
一方、曖昧なゴールはどうか。
「顧客が満足するハンバーグを作ってほしい」と言われた場合を想像してみてほしい。依頼した上司は満足するかもしれないが、顧客は満足しないかもしれない。その逆もありうる。何をもって「満足」とするのか、基準が曖昧なのだ。
ビジネスの現場では、この曖昧なゴールの仕事が圧倒的に多い。企画書の作成、Webサイトの作成、新商品の開発、顧客の課題を解決する提案など……。ほとんどがこのタイプだ。だからこそ上司のフィードバック能力が問われるのである。
企画書作成で見えてくる上司の問題行動
具体的な例で考えてみよう。上司が部下に「10ページ程度の企画書を1週間で作ってほしい」と依頼したとする。
部下は詳細を確認し、数日後に企画書を提出したとしよう。上司はそれを見て「よくできているが、ここの部分を修正してほしい」とフィードバックする。部下は指摘された箇所を修正し、「これでいいですか?」と再提出する。どんな職場でもある光景だ。
再提出された企画書が、上司の期待通りであればよい。しかしそうでない場合は、再びフィードバックすることになる。
「ここの修正は、こうじゃない」
「ここは指摘してなかったが、これもこう変えてほしい」
このフィードバックが、上司が納得するまで何度も続くのだ。なぜ、このようなことが起こるのか。理由は次の3つである。
- 上司の指摘を部下が十分理解せずにやり直した
- 前回は気付かなかった新たな問題点を上司が発見した
- 上司が最初から分かっていたが、一度に指摘すると大変だと思って小出しにした
厄介なのは、上司のフィードバック内容が変わることだ。「工程表は3ページ目に」と指摘したのに、後から
「うーん、やっぱり後ろの方がいいかもしれない。悪いけど、元に戻して」と言い直すのだ。他にも「これは違うかもしれない」と後から変更を求めることもある。
部下からすると「最初から全部指摘してほしい」「あとから元に戻してなんて言わないでくれ!」と言いたいだろう。
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