「売れる」は禁句──営業会議で使うと“組織が腐る”言葉の正体:「キレイごとナシ」のマネジメント論(4/5 ページ)
業績低迷に悩む企業が、営業会議の「言葉」を変えただけで再生。組織を変える第一歩は、意外にも“言い回し”から始まった。
部下育成でも同じ原理が働く
この原理は部下育成にも当てはまる。多くの上司が犯している間違いがある。それは「育つ」という自動詞を使うことだ。
「なかなか育たない」
「成長してくれない」
このような愚痴をこぼす上司は多い。しかし問題は部下にあるのではなく、上司の言葉づかいにある。
正しくは「育てる」「成長させる」という他動詞を使うべきだ。
「私が育てる」
「あの課長が育てるべきだ」
「私たちが成長させる」
主語を明確にすることで、育成責任がはっきりする。部下が成長しないのは、部下の問題ではなく、育てる側の問題だということが見えてくるのだ。
優秀なマネジャーほど、このような言葉づかいを自然に身に付けている。部下の成長を他人事として捉えるのではなく、自分の責任として受け止めているからだ。
主語を変えることによって見えてくる世界、そして自分の覚悟。それが組織の力を大きく左右する。言葉づかいひとつで、組織の運命は大きく変わるのである。
実践的な言葉の変換表と組織への導入方法
では、具体的にどのような言葉を変えればいいのか。実践的な変換表を示そう。
営業・売り上げ関連
- 売れる→売る
- 決まる→決める
- 伸びる→伸ばす
- 成果が出る→成果を出す
人材育成関連
- 育つ→育てる
- 成長する→成長させる
- 覚える→覚えさせる
- スキルが身に付く→スキルを身に付けさせる
組織運営関連
- 改善される→改善する
- 問題が解決する→問題を解決する
- チームワークが良くなる→チームワークを良くする
組織全体で導入するには、以下の段階的なアプローチが重要だ。
リーダー自身が実践する
まずは管理職が率先して言葉づかいを変えよう。会議での発言、部下との面談、全ての場面で意識的に他動詞を使う。
会議で徹底する
営業会議や部門会議で、自動詞が出たらその場で他動詞に言い直そう。最初は違和感があるが、継続することで習慣化される。
日常会話でも積極的に使う
朝礼、廊下での立ち話、メールでのやりとり。あらゆる場面で主語を明確にした表現を心掛けよう。
相互にフィードバックする
同僚同士で言葉づかいをチェックし合う習慣を身につけよう。月に一度、言葉づかいの振り返りを行い、改善点を共有するのもいい。
この製造業の会社も、3カ月かけて段階的に導入した。最初の1カ月は抵抗もあったが、2カ月目には自然に他動詞を使えるようになり、3カ月目には組織全体の雰囲気が劇的に変わったという。
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