コラム
» 2007年09月13日 08時00分 公開

場違いなほどの完成度――「OLYMPUS XA」-コデラ的-Slow-Life-

OLYMPUS PEN、PEN F、OM-1など数々の名機を世の中に送り出してきた天才設計者が、現役で手がけた最後のカメラ「OLYMPUS XA」。プロもサブカメラとして愛用したというこの名機は、ポケットから取り出してどこでも本気で絵作りができる。

[小寺信良,ITmedia]

 基本的に電子式になったカメラには興味がないのだが、OLYMPUS XAだけは別だ。今のコンパクトデジカメに慣れた目から見れば、プラスティックの安っぽいコンパクトカメラにしか見えないかもしれないが、このXAはOLYMPUS PEN、PEN F、OM-1など数々の名機を世の中に送り出してきた天才設計者、米谷美久氏が現役で手がけた、最後のカメラなのである。

 たまたま見つけたジャンクのXAは、巻き上げはできるものの、シャッターが降りなかった。シャッターボタンがフェザータッチで、この部分が壊れていたらやっかいだなと思いつつ購入。

 カバーを閉じれば女性に親しみやすいカプセル型、開けば男がうなるメカ部が現われるというデザインは、カメラ部門としては初めてグッドデザイン賞を受賞した。OLYMPUSの小型機だが、いわゆる「ハーフサイズ」ではない。

photophoto カバーを開けると表情が一変する

 1979年に発売された当時、コンパクトカメラはすでに自動露出とパンフォーカスで、撮影時の面倒がないカメラが主流であった。その中にありながら、同サイズでマニュアル撮影のレンジファインダー機として、XAは登場したのである。

 当時のカメラというのは、カバーやケースに入れて使うのが普通であった。もちろんレンズキャップも必要である。だがXAは、これらの付属品を不要にした、画期的なカメラだった。


photo カバーを開けると裏蓋が絶対に開かなくなる

 それを実現したのが、ボディの半分を覆っているカバーだ。今でこそスライドするレンズカバーは珍しくないが、その元祖がこれだ。しかしただカバーするだけではない。閉じたときはそれに連動して、測距用の小窓もカバーが閉じる。フィルムの巻き上げは可能だが、シャッターがロックされる仕組みだ。

 また開いたときはフィルムの巻き取りレバーが隠され、無茶な巻き取りを防ぐとともに、裏蓋の押さえにもなり、不用意に裏蓋が開かないようになっている。わかって使う人だけではなく、撮影時の不注意による事故も完全に防止されている。

小型だが本物のレンジファインダー機


photo コンパクト機ではあり得ないほど贅沢なレンズ

 手にとってよく眺めてみると、確かに並みのコンパクトカメラにはあり得ない、高級スペックであることがわかる。レンズはFズイコー35mm/F2.8。OLYMPUSのレンズは、アルファベット順がレンズの枚数を表わしている。Fということは、コンパクトカメラに6枚もレンズを使っているということである。


photo レバー1つで多彩な機能を実現

 二重像による距離合わせは、レンズ下のレバーで行なう。フィルム感度もASA25から800まで細かく刻まれており、自分で露出補正を行なうことも可能。またボディ下のレバーでも、+1.5の露出補正ができる。さらにこのレバーを90度立てれば、セルフタイマーモードになる。このレバーが自立するときの足にもなるという、考えに考え抜かれた設計だ。


photo レンズ脇のレバーで絞りを選択

 レンズ脇には絞りレバーが配置され、シャッター優先のように見えるが、ファインダ内には適正露出のシャッタースピードが針で示される。つまりレバーだけ見れば絞り優先、ファインダを覗いてレバーを調整すればシャッタースピード優先になるという、合理的な機構であった。

 XAはボタン電池2つを使用し、これで露出計と電子シャッターを動かしている。そしてまたここにも、細かい配慮がある。通常フィルムを装填したときは、巻き上げて空シャッターを何枚か切り、スプールに巻き付けることになる。XAでは設計上、このときはレンズカバーが閉じていることになる。そうしないと裏蓋が開かないからだ。


photo 赤いシャッター部はフェザータッチ

 だがそうなるとレンズ部にある露出センサーも一緒に隠してしまうので、このままだともっとも低速シャッターである10秒にセットされてしまう。空送りするのにも、そうとう待たされるわけだ。しかしXAでは、裏蓋が開いているときは自動的にシャッタースピードが1/8秒になるよう、設計されている。このあたりの気配りの細かさこそ、日本のカメラの真骨頂ではないだろうか。

 これ以降のXAシリーズは、時代の趨勢もあってか、次第にとがった部分が失われていくことになる。ポケットから取り出してどこでも本気で絵作りができるのは、プロもサブカメラとして愛用したというこのオリジナルのXAだけではないかと思う。

小寺 信良

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映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作はITmedia +D LifeStyleでのコラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。



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