ライトワンス型SDカード「SD WORM」の可能性
サンディスクが2008年に出荷を開始したライトワンス型SDメモリーカード「SD WORM(Write Once Read Many)」は、対応機器で記録されたデータの改ざんが行えないという特徴を持つ。100年のデータ保存が可能という耐久性も併せ持っており、その特徴を評価され、日本の警察機関へ大量導入が決定したほか、医療や建設、会計などへの利用が期待される。来日した米サンディスクのクリストファー・ムーア氏に製品の狙いについて尋ねた。
ムーア氏: SD WORMカードの特徴は2つあります。1つはライトワンスであること、もう1つは非常に高い耐久性を持つことです。
ライトワンスについてはカード単体ではなく、ファームウェアやカメラなど対応機器との組み合わせによって実現しています。その中核となっているのはメモリーカードに搭載されたメモリコントローラで、この部分にはわたしたちの技術や特許が生かされています。
このような特徴を持ちますが、SD WORMカードの使い勝手は一般的なSDメモリーカードと変わりません。改ざんに強く、耐久性が高いものの使い勝手は変わらない――そのメリットが生かせる領域としてまず想定したのが警察、司法の分野です。これまで改ざんの可能性があるとしてフィルムカメラからデジタルカメラへの移行をためらっていた層に歓迎されています。
万が一「消去」ボタンを押してもデータは消えませんから、警察以外にも、医療や電子レシート、建設や不動産、電子投票など、記録の厳格性やデータの長期保存が求められる領域で適していると考えています。
――日本の警察機関に多く導入されたと発表されましたが、そのほか具体的な導入例があれば教えてください。また、カードの価格は非公開となっていますが、一般的な製品より高価なのでしょうか。
ムーア氏: アメリカのある医療現場では撮影した写真をSD WORMで保存して、患者ひとりにつきSD WORMカード1枚という取り組みをしています。医療分野については法律的な制約もあると思いますが、画像のデジタル化ができれば大幅なワークフローの改善になるはずです。
また、税務記録が紙で保存されることが重視されている国や地域があります。こうしたところでレジスターにSD WORMによる記録装置が組み込まれれば、会計の数値が改ざんされる心配もありませんし、データも長期にわたって保存できます。
特定用途向け製品ということで価格は公開していません。スタンダートタイプに比べると確かに高価ですが、銀塩のフィルムや紙で情報を保存していくことを考えると、TCO(Total Cost of Ownership:総保有コスト)削減へ非常に効果的だと思います。
SD WORMを発表して以来、いろいろな人から人から問い合わせをもらい、そのたびに新しい使い道のアイディアをもらっています。バスや電車の運行記録など、こちらが最初想いもしなかった使い道の話を聞くこともあり、とても楽しく仕事ができています。
――カードに記録された状態ならば改ざんに強いというのは分かります。ただ、PCなどへデータをコピーすることでそうした強みは失われてしまうのではないですか?
ムーア氏: SDメモリーカード規格に準拠していますから、一般的なSDメモリーカードリーダーでデータを読み出すことは可能で、カードから読み出されてしまった場合、データ自体の非改ざん性は保持できません。これは運用側で対応する領域となります。
ですが、カードのシリアルナンバーをウォーターマーク(電子透かし)としてデータへ埋め込むことができるので、ある程度のセキュリティは保つことができます。「カード上で改ざんされない」とは、「オリジナルデータがオリジナルである」ことの証明になりますから、その証明ができることが大きな意味を持つのです。
――SD WORM自体の発表は2008年7月のことで、約2年の時間が経過しています。その間にどのような変化がありましたか。
ムーア氏: 発表当初の容量は128Mバイトでしたがこれは1Gバイトまで大きくなりましたし、読み書きのスピードも向上しました。ですが、最も大きな変化は日本の警察機関に導入していただいたことです。対応製品がなければシステムとして利用できず、その環境構築に時間がかかることを考えれば、2年でここまでこれたことはむしろ驚きとも言えます。
――SD WORMをSDメモリーカード規格の一部として、SDアソシエーション(SDA)へ提案する意向はありますか?
ムーア氏: ワーキングループを組織して提案する準備を進めています。ただ、技術的な問題より、セキュリティの高さや耐久性をどのように担保するのかが問題となる気がします。SD WORMの規格化が行われるか分かりませんが、自社のみが独占することは望みません。あくまでも規格やシステムとして広がっていけばいいと思っています。
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