ある日、山田五郎氏と中川翔子さん(しょこたん)がパーソナリティーを務めるラジオ番組「DoCoMo 東京REMIX族」を聞いていた。「何々の極み」というコーナーがあり、この日のテーマは「フクロウの極み」だった。ちょうど今月のネタを考えている時だったので、今回は南アフリカのカラハリ砂漠に生息するフクロウたちについて書いてみることにした。
一口に「フクロウ」と言っても大小様々なものがおり、全世界では200種以上、南部アフリカだけでも12種類が生息している。カラハリ砂漠を住処とするものはそのうちの6種類だ。ちなみに、ここで言う「フクロウ」とは分類学上のフクロウ目(もく)を指し、そこにはミミズクの仲間も含まれる。一般的に言うフクロウとミミズクの違いは、頭に耳のように突き出た羽があるかどうかだけなのだ。
クロワシミミズクは南部アフリカ最大のフクロウだ。体長は60〜65センチもあり、特徴的なピンク色のまぶたを持つ。カラハリ砂漠では、日中アカシアの木にとまって眠たげにしている姿をよく見かける。ミミズクというからには耳のような羽が頭頂部にあるわけだが、実はこの羽、聴覚とはまったく関係がない。そもそも耳の位置とは全然違う場所に生えており、何のためにあるのかはいまだ解明されていない。
アフリカワシミミズクはアフリカ大陸に最も広く分布するワシミミズクで、黄色い大きな目をしている。フクロウの仲間は鳥には珍しく、両目が正面を向いている。これは獲物までの距離を正確に計るためで、また、目が大きいのは夜間でも物が見えるように進化した結果だ。
従ってフクロウたちは鳥でありながら決して「鳥目」ではない。しかし、夜目がきくとは言っても完全な暗闇では何も見えない。月明かりや星明かりなど、何らかの光源が必要なのだ。完全な暗がりでも飛行できるのは、視覚ではなく超音波で周囲を認識できるコウモリのみである。
アフリカオオコノハズクのコノハズクは「木葉木菟」とも書く。その名の通りカムフラージュの名手で、日中は木の中でじっと動かず、葉や枝のふりをしている。しかも驚いたり、危険を感じたりすると、体をにゅーっと細長くするという不思議な「技」を持っている。写真の左側が日中、体を細めている状態、右側が夜間活動している際の姿だ。とても同じ鳥とは思えない変わりようである。
アフリカスズメフクロウは体長わずか18センチ程度と、南部アフリカ最小のフクロウだ。多くのフクロウは夜行性だが、スズメフクロウは昼間でも活動し、トカゲや昆虫などのエサを探しまわるので、小型ながら見付けるのは比較的容易だ。
夕暮時になると澄んだ口笛のような声で「ピヨ、ピーヨ、ピイーヨ」と鳴く。実はフクロウがみな「ホー・ホー」と鳴くわけではないのだ。この他にもカラハリ砂漠にはメンフクロウとアフリカコノハズクが生息している。
フクロウの仲間は、人のような「顔立ち」をしているためか、昔から世界中の神話や寓話に登場してきた。例えば古代ギリシャでは、フクロウは女神アテナの従者であり、知の象徴とされていた。日本でもアイヌの人々はシマフクロウをコタンクルカムイ(村の守り神)と呼び敬ってきた。
一方、アフリカではどうかというと、サハラ以南のバントゥー語族系の人々の間では、フクロウは凶兆とされ忌み嫌われている。フクロウが家の屋根で鳴いたとき、その家の誰かが重い病気になるか、死に至るとする伝承が各地に伝わっている。
昔訪れた西アフリカ、トーゴのブラックマジック・マーケット(呪術に使うさまざまな動物の部位などを扱う専門市場)では、メンフクロウの頭や足が大量に陳列されていた。それほどフクロウは負の力をもっていると信じられているのだ。今のところフクロウを吉兆とする人々の話にアフリカでは出会っていない。
しかし、実際にはフクロウの存在は人にとってありがたいものである。何故なら、フクロウが暮らしている場所は、それだけエサとなる生物や巣を作れる木が豊富で、環境が健全であることを意味しているのだ。
山形豪(やまがた ごう) 1974年、群馬県生まれ。少年時代を中米グアテマラ、西アフリカのブルキナファソ、トーゴで過ごす。国際基督教大学高校を卒業後、東アフリカのタンザニアに渡り自然写真を撮り始める。イギリス、イーストアングリア大学開発学部卒業。帰国後、フリーの写真家となる。以来、南部アフリカやインドで野生動物、風景、人物など多彩な被写体を追い続けながら、サファリツアーの撮影ガイドとしても活動している。オフィシャルサイトはGoYamagata.comこちら
【お知らせ】山形氏の新著として、地球の歩き方GemStoneシリーズから「南アフリカ自然紀行・野生動物とサファリの魅力」と題したガイドブックが出版されました。南アフリカの自然を紹介する、写真中心のビジュアルガイドです(ダイヤモンド社刊)
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