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D600かD7000か――ニコンに聞く「フルサイズ」(後編)(1/2 ページ)

» 2012年11月30日 11時00分 公開
[野村シンヤ,ITmedia]
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photo ニコン 映像カンパニー マーケティング本部 第一マーケティング部 第一マーケティング課 マネジャー 石井弦一郎氏

 ニコンが今秋に投入したFX(フルサイズ)カメラ「D600」は、これまでフルサイズが気になるけど手が出ない人に向けた製品として企画され、大きなヒットとなった。ただ、同社には「D7000」などDX(APS-C)も数多く用意しており、レンズ交換式という意味ではミラーレスカメラ「Nikon 1」シリーズも展開している。

 多種多彩なレンズ交換式カメラはどのようなユーザーを想定し、進化していくのか。前編に引き続き、商品企画を担当する石井弦一郎氏(ニコン 映像カンパニー マーケティング本部 第一マーケティング部 第一マーケティング課 マネジャー)に話を聞いた。

「D600」か「D7000」か

━━D600の発表会でプレゼンテーションされた製品ラインナップを見ると、D600とD7000が近い位置にあるので、想定しているユーザー像は近いのかと思います。「D600かD7000か」を考える、ユーザーに対してのメッセージはありますでしょうか。

石井氏: 機動性を重視されるお客様でしたらDXの方が分があると思います。どうしてもセンサーのサイズが大きくなればカメラ自体が大きくなってしまいますが、これはある程度、相対的には仕方ないことだと思っています。一眼レフである以上、シャッターを動かすための機構などには大きな力を要しますので、どうしてもカメラ自体が大きく重くなってしまうのですね。あと、DXはレンズも含めて全体のシステムがFXに比べて小型化できますので、機動性とか軽量さを求めるお客様にはDXですね。

photo D600の発表会にて提示されたプレゼンテーション

 一方、FXカメラはなんといっても画質が優れていますので、少々大きいのも止むを得ないという、それよりももっといい画質のカメラが欲しいというお客様にはFXですね。機動性と画質、もちろん両方だよというお客様も多いと思われますが、その方には大いに悩んでいただきたいと思います。それもカメラの楽しみのひとつですので。

━━D600は左肩の撮影モードダイヤルなど操作系が登場時期の近いD800などとはまた違っていますが、これは何か意図された部分というのはあるのでしょうか?

石井氏: 実は、D600の操作系や操作スタイルといった部分はD800ではなく、D7000に近くしています。お客様がFXかDXかで対して悩むところはそれぞれとしても、カメラに求める機能はさほど変わらないのではないかという考えからです。D600にも相当な機能を詰め込んでありますので、仮にD7000からステップアップされてもこのカメラであれば、何の違和感もなく使っていただけるようになっています。

 一方でD800はプロユースも含めて考えておりますので、D4とD800で操作系は合わせるようにしてあります。ですから、D4を使っているお客様はD800を使っても違和感ないように、また逆もしかりで、そのような区分けで作ってあります。操作系の考え方の違いでは、D4/D800とD600/D7000の間に線引きがあるということです。

━━フォーマットで分けるというより、利用者のカメラにイメージでD4/D800、D600/D7000、D5200/D3200と分かれているということですね。

石井氏: エントリーのD3000系、D5000系があって、D600、D7000といったミドルがあって、D4、D800がプロフェッショナルという位置づけですね。D600については、「FXは使いたいけど、難しいカメラは使いたくない」というユーザー像も想定していますので、FXカメラですが操作系はミドルレンジに合わせています。

━━それはデジタル一眼レフラインアップの再構成といえるのでしょうか。

石井氏: 「D3」と「D700」を投入したときから、FXセンサーを搭載したカメラの市場は今後どんどん変わっていくと思っていました。ですので、それぞれの後継を出せばいいとは考えておらず、「FXカメラ」への反響を見ながらゼロから企画した結果、2012年に登場したのがD4であり、D800であり、D600です。

 これらは単純な上下関係ではなく、それぞれにミッションを持っています。決して、価格や画質で優劣をつけているわけではないのです。

 実際にD4とD800を比べるとお分かり頂けると思いますが、D4は約1620万画素ながら10コマ/秒以上の連写性能を持ち、D800は連写速度こそD4に及びませんが約3630万画素という圧倒的な高精細画質が特色です。同じFXカメラでもコンセプトが明確に違いますので、D4の廉価版がD800とかそういった感覚では一切作っていません。D600も決してD800の廉価版としての位置づけではありません。

━━「35ミリフルサイズ」というと、どうしても写真純度的に高くて近寄りがたい雰囲気、言い換えるとそこが魅力でもあるのですが、D600はそういったものを若干引き下げるというカメラなのですね。

石井氏: D800ですと「難しそう」という雰囲気も醸し出してしまうかもしれませんが、D600ならばシーンモードなども用意していますので、難しそうと身構えてしまう人でもすんなり操作できると思います。結果的にはD7000に近い操作系となったのですが、モードダイヤルにロック機構を搭載するなど、D7000発売後に寄せられたご意見も反映した最新型の操作性にしています。

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