カールツァイスといえば、19世紀からの長い歴史を持つドイツの光学メーカーだ。最近ではコシナやソニーが同ブランドのレンズを製造・販売してきたが、このたびカールツァイス自らが新しい交換レンズを発売した。ミラーレス用の広角レンズ「Touit 2.8/12」と標準レンズ「Touit 1.8/32」だ。
どちらも、富士フイルムXマウント用とソニーEマウント用の2種類が用意。マウント部には電子接点を備え、オートフォーカスに対応するなど、純正レンズとほぼ変わらない操作感で使えるようになっている。今回はXマウント用を選択し、ボディには富士フイルム「X-E1」を用いた。
製品を手にしてまず感心したのは、その外観デザインの美しさだ。レンズの付け根から先端までのラインがなだらかな曲線を描き、標準付属するフードと鏡胴部が一体化して丸みを帯びた独特のフォルムを作り出している。外装はフルブラックの金属製。硬質な触感と高品位な雰囲気があり、X-E1のマグネシウムボディにもよく似合う。
レンズの側面には製品名がやや大きな文字で刻まれ、前面の銘板には「Distagon 2.8/12」と「Planar 1.8/32」という光学系の構成を示す名称が刻印されている。独自の「T*(ティースター)」コーティングを示す赤文字もしっかりと記載。好き嫌いはともかく、このあたりはブランドとしての価値をアピールしている部分だ。
鏡胴部には、フォーカスリングと絞りリングを配置。絞りリングの装備はXマウント用のみとなり、残念ながらEマウント用では省かれている。マニュアルフォーカスの操作は、回転に適度なトルクがあって心地よい。1/3段刻みでクリック感のある絞りリングについては、回転がややゆるい印象が残るが、勝手に動くほどではない。両リングとも、表面には滑り止めとしてラバーがはられている。ラバーの端にやや隙間が見られることと、ホコリが付着しやすい点は気になるが、手触り自体は悪くない。
「Touit 2.8/12」は、35ミリ換算で18ミリ相当の画角を得られる広角レンズだ。Xマウントには、「XF14mm F2.8 R」という純正の広角レンズがあるが、それに比べると少し焦点距離が短く、その分、レンズの全長やフィルター径、重量はそれぞれややアップしている。といっても大柄というほどではなく、スナップ用などに気軽に持ち運べるレンズである。
下の写真は、18ミリ相当の広い画角を生かして奥行きのある構図を狙ったもの。見た目の印象以上にパースペクティブを強調できるのは、このクラスの広角レンズの醍醐味だ。非日常的な雰囲気を演出できる。
描写性能は、各種の収差が目立たないようきっちりと補正されている。広角レンズにありがちなタル型の歪曲や周辺減光はほとんど気にならない。絞り込んで撮るパンフォーカスの表現はもちろんは得意だが、開放値でも四隅までまずまずシャープな写りが得られることには好印象を受けた。
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