ITmedia NEWS >

マニュアル操作が心地よいスナップレンズ――カールツァイス「Loxia 2.8/21」交換レンズ百景

» 2016年01月29日 22時30分 公開
[三井公一ITmedia]

 心地よい粘りのあるフォーカスリングを指先で回す。ぼやけていた像が「α7R II」のEVF(電子ビューファインダー)でジワジワと鮮明になってくる。合焦したらこのカメラ特有のややゴリゴリとしたシャッターボタンを押し込んで撮影完了だ。久しぶりにマニュアルフォーカスのレンズを使った。このレンズの名はカールツァイスの「Loxia 2.8/21」。焦点距離は21ミリで開放F値2.8という、スリムでコンパクトな1本だ。

Loxia 2.8/21 カールツァイスの「Loxia 28/21」。ボディは「α7R II」を使った

 ソニーのα7シリーズのために設計されたLoxiaレンズは、全てマニュアルフォーカスを採用している。その操作感はとても上質だ。軽すぎず重すぎず、適切な抵抗感で「フォーカシング」という行為を楽しませてくれる。絞りリングも歯切れのいいクリック感があり好印象だが、動画撮影時にクリック音が収録されないよう、デクリック機能を備えているのも特長である。付属の工具でレンズのマウント面にあるロックをひねると絞りのクリックがフリーとなり、操作音が消せるとともにスムーズな絞りの開閉が可能になる。またラバー製のシーリングが施してあり、カメラボディとレンズとの電気接点を保護している。

 写りもとても上質だ。21ミリとワイドながらディストーションがほとんどなく、直線が気持ちよくストレートに撮影できた。色乗りはややあっさり気味と感じたが、解像感もとても高く、高画素機のα7R IIでも満足のいく写りだ。逆光にも強いので、建築、風景からスナップなど幅広いジャンルで活躍できそうなレンズとなっている。マニュアルフォーカスでF2.8という開放値のため、レンズ本体は軽量でとてもコンパクトに仕上がっている。常用のスナップレンズとしてα7シリーズにピッタリな1本かもしれない。

Loxia 2.8/21 絞り優先オート(F8、1/160秒)、ISO100、WB:オート、露出補正:-1EV

 日が長くなって春の気配を少しばかり感じる午後、何気なく歩道を写してみた。そのわずかな明るい雰囲気と路面のディテールをこのレンズはしっかりと捉えてくれた。

Loxia 2.8/21 絞り優先オート(F9、1/200秒)、ISO100、WB:オート、露出補正:-1.3EV

 ディストーションがほとんどなく、直線が気持ちいいくらいに真っすぐ写るのが爽快だ。建築物や室内など広い焦点距離を生かした撮影に向いているレンズである。

Loxia 2.8/21 絞り優先オート(F11、1/800秒)、ISO100、WB:オート、露出補正:-1.3EV

 広い画角のレンズを屋外で使うとどうしても太陽がフレームに入るシーンが多くなる。なので逆光の描写がいいのがとても嬉しい。光芒も美しく、イヤなフレアの発生もないので安心だ。

Loxia 2.8/21 絞り優先オート(F8、1/800秒)、ISO100、WB:オート、露出補正:-0.7EV

 4240万画素を誇るα7R IIでこのレンズを試したが、実に緻密な描写を見せてくれた。木々の枝先の細かさ、地面に生える草の写りはなかなかのもの。

Loxia 2.8/21 絞り優先オート(F5.6、1/100秒)、ISO100、WB:オート、露出補正:-0.3EV

 ツァイスらしい落ち着きのある色再現も魅力的だが、街中スナップで自身の手によるマニュアルフォーカス撮影の醍醐味も楽しい。被写体を発見してフレームに捉え、ススッとスムーズにピントを合わせられると快感ですらある。

Loxia 2.8/21 絞り優先オート(F2.8、1/400秒)、ISO100、WB:オート、露出補正:-0.7EV

 F2.8という開放値だが被写体にグッと寄ってシャッターを切れば美しいボケ味を堪能できる。最短撮影距離は25センチだ。点光源の丸ボケも雰囲気があっていい。

Loxia 2.8/21 絞り優先オート(F16、1/60秒)、ISO100、WB:オート、露出補正:-1.3EV

 絞り込んで被写界深度を深くしておき、ブラブラと歩きながらピント合わせをしないでスナップして歩くのもこのレンズの醍醐味だ。設定した絞り値におけるピントの合う範囲は、距離計目盛り部分にマーキングしてあるので参考にしてシャッターを切ろう。

Loxia 2.8/21 絞り優先オート(F4、1/250秒)、ISO500、WB:オート、露出補正:-1.7EV

 軽量でコンパクト、高い解像感、味のある色再現、マニュアルフォーカシング、と写真撮影の楽しみを全て堪能できるこのレンズは、純正FEレンズに満足できないフォトグラファーが求めていたものかもしれない。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.