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» 2004年06月16日 21時01分 公開

Interview:Liquid Computing構想で世界の進むべき方向を指し示すBEAのチュアングCEO

インターネットによって解き放たれたITには、必然的にさらなる柔軟性が求められている。まるで「液体」(liquid)のようにそれ自体を変えていく柔軟さだ。次の10年のビジョンを明らかにしたBEAのチュアングCEOに話を聞いた。

[浅井英二,ITmedia]

J2EEのリーダー、BEA Systemsは、5月下旬の「BEA eWorld 2004 San Francisco」で「Liquid Computing」構想をぶち上げた。インターネットの隆盛は、同社を成功に導き、10億ドル企業へと押し上げたが、いったん解き放たれたITには、さらなる柔軟性が求められている。それは、既存のさまざま技術を前提とし、また、将来の技術やデバイスに対応すべく、「液体」(liquid)のようにそれ自体を変えて順応していく柔軟さだ。10年前、BEAの設立に参画し、今もCEOとして同社を率いるアルフレッド・チュアング氏は、この構想によって世界がどの方向に進むべきかを指し示そうとしているのだという。それは次の10年に向けた同社のビジョンでもある。6月17日から始まる「BEA eWorld JAPAN 2004」のために来日したチュアング氏に話を聞いた。

「世界を変える」と意気込むチュアングCEO

ITmedia 5月下旬の「BEA eWorld 2004 San Francisco」で「Liquid Computing」構想が明らかにされ、あなたもオープニングのキーノートで多くの時間を割いて説明しました。以前、スコット・ディッゼンCTOは、「マイクロソフトがデスクトップで行ったことをエンタープライズコンピューティングで成し遂げたい」と話したことがありました。Liquid Computing構想は、何を狙っているのでしょうか?

チュアング マイクロソフトのソフトウェアは、必ずしも優れているから使われている訳ではありません。われわれは、むしろその互換性がゆえに使っているのです。例えば、あなたがメモを取ったものを記事にし、デジタルカメラのイメージを付け、私にメールします。私は、それを修正して返信することも簡単にできます。つまり、デスクトップにおいてはアダプタビリティ(適応性)が大きく前進したのです。

 しかし、エンタープライズコンピューティングは、これと逆です。混沌とし、互換性がないシステムが孤立しており、ここ数年、新しいソフトウェアが加わり、さらにその複雑さが増しています。だれかが、新たに開発されるすべてのアプリケーションのベースとなるものを提示しなければならないのです。そこでわれわれは、Liquid Computingを打ち出しました。

単に製品提供だけでは不十分

ITmedia BEAは、10年前、Tuxedoによって会社を興し、その後、WebLogicを買収してJavaアプリケーションサーバベンダーとして知られるようになったわけですが、Liquid Computing構想によって事業領域がさらに拡大していくのでしょうか?

チュアング BEAがどういう問題を解決しようとしているのか、人々が理解するには少し時間がかかるようですね。

 われわれは、Webベースコンピューティングのためのビルディングブロックをこれまで開発してきたといえます。JVMから始まり、アプリケーションサーバ、ポータル、Liquid Data、インテグレーション、セキュリティなど、キーとなるビルディングブロックによってエンタープライズコンピューティングを変革するソリューションを提供してきました。

 しかし、単に製品を提供するだけでは不十分だと考えています。どういうアーキテクチャの上にアプリケーションを載せていくのかを示していくことが重要です。マイクロソフトも、WindowsとOfficeによってそれを示し、PCが最大限に活用されています。

 Webベースコンピューティングを支えるキーテクノロジーは何なのか? そしてまた、これ以上複雑にしないためにオープンで特定技術に縛られないアーキテクチャをきちんと定義しなければなりません。Liquid Computingは、世界が進むべき方向を示すためのアーキテクチャであり、マーケティングメッセージなのです。

 きょうの朝、沖電気工業と戦略提携を発表しました。SIP(Session Initiation Protocol:IP電話の標準になるとみられる通信手順)を搭載したJ2EEアプリケーションサーバ「SipAs on WebLogic」を共同開発し、世界で販売していこうというものです。WebとVoIPのアプリケーションを1つのサーバに統合できるほか、Workshopコントロールを利用することによって簡単に音声系のアプリケーションをWeb上に構築できます。

 これは単に製品にとどまりません。通信の世界が進む方向性を示すコンセプトでもあるのです。

必要に応じてリンクできるバス

ITmedia サンフランシスコのeWorldでは、「Project QuickSilver」のデモもありました。この狙いも教えてください。

チュアング メッセージングは2種類に大別されます。1つはオンライントランザクション型なもので、通知とそれを受け取ったという緊密に結合されたメッセージングです。それに対して、もう1つは、もっと興味深く、アダプタビリティ(適応性)のある疎結合型のメッセージングです。それは定期的にやり取りがあるものではなく、例えば、こういうサービスがあるので、必要な人はコンタクトをとってください、といったメッセージングです。

 もちろん、トランザクション型のメッセージングももちろん必要ですが、いま市場で台頭しているのは新しいアプリケーションで求められているのは疎結合のタイプです。そういう意味で、QuickSilverの開発プロジェクトは時機を得たものといえるでしょう。

ITmedia QuickSilverは、密結合型と疎結合型どちらにも対応できるということですか?

チュアング いいえ、トランザクション(密結合)型は、インテグレーション機能を統合したWebLogic Platformが既にサポートしています。しかし、そこでの問題はBEAのテクノロジーだということです。疎結合型では、特定の技術をあらかじめ想定することはできません。さまざまな技術がある中、インテグレーションというよりは、むしろ必要なときだけリンクする共通のバスが求められているのです。

未知の端末にもAlchemyなら適応

ITmedia もう1つ、開発が進んでいるプロジェクトとして「Alchemy」もベールを脱ぎました。

チュアング 現在、ほとんどのアプリケーションはブラウザ上で稼動しています。かつての専用端末に比べれば柔軟性は高いのですが、ネットワークに接続されていることが前提となります。

 一方、モバイル機器の進展を見ていると、しだいに多くのPCを置き換えていくだろうことは間違いないのですが、例えば、携帯電話の場合はスクリーンの問題からアプリケーションに限界がありそうです。今のところ携帯電話では、「この購入申請を承認する/しない」といったアプリケーションが適しているといえるでしょう。

 しかし、モバイル機器は携帯電話だけとは限りません。今後2〜3年、無線通信インフラの整備や高速化が進むと、さらにさまざまな端末が登場するでしょう。そうなるとデベロッパーからすれば、アプリケーションがどこにデプロイされるのか開発段階で想定することが難しくなります。携帯電話、車載コンピュータ、ノートブックPC、デスクトップPC、あるいは将来登場する新しい端末……、そうなれば、どんな端末でも稼動するアプリケーションが必要になるはずです。Alchemyは標準的なブラウザにキャッシュや、XHTML、SynchML、JavaScriptといったWeb標準の技術を追加してやることでそれを可能にしていきます。

「ディストリビューション」にも投資

ITmedia 今後5年で売り上げを現在の10億ドルから30億ドルに引き上げるとしていますが、それはどのように実現していくのでしょうか。

チュアング とても大きなチャレンジだといえるでしょう。実現するためには、世界を変える「イノベーション」と、その技術を効率良く顧客に届ける「ディストリビューション」が必要になります。そのためには、パートナーシップも極めて重要で、技術だけでなく、そうした面にも継続的に投資を行っていきます。

ITmedia SOA(サービス指向アーキテクチャ)が浸透すれば、パッケージアプリケーションの世界も大きく変わるとみられています。水平的なアプリケーションの領域へBEAが入っていくこともあるのでしょうか?

チュアング それはわれわれにとって必然でしょう。例えば、ポータルが良い例です。現在でこそ、ポータルは個々のユーザーに応じて適切なインタフェースを提供する、アプリケーションを構築するための要素技術として考えられていますが、BEAが創業した10年前はアプリケーションでした。

 激しく環境が変化する中、企業が新しいビジネスを創造していくにはアプリケーションの迅速な導入が不可欠となっています。大きな、そして緊密に結合しているパッケージアプリケーションではもはや次から次へと変化するビジネスニーズに対応することはできません。今後は、モジュールを必要に応じて迅速に組み合わせていくコンポジット型アプリケーションの重要性が増していくはずです。BEAとしては、自ら提供するかは別として、コンポジット型のアプリケーションを容易に構築できるための仕組みをつくり、ディストリビューションを効率化していくことを考えています。

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