Procket買収で、Ciscoの次世代ルータに陰り?

CiscoはProcketの知的財産を手に入れたが、これはCiscoの次世代ルータ「CRS-1」に採用されているチップやOSの将来に影を落としている。他社技術の買収は、CRS-1に問題があることを示しているとの指摘も。(IDG)

» 2004年06月18日 19時03分 公開
[IDG Japan]
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 予想通り、Cisco Systemsは今週、ルータおよびルーティング技術を手がけるProcket Networksから、知的財産、技術者チームの大半、一部の資産を8900万ドルの現金で買収する最終合意を交わしたことを明らかにした(関連記事参照)。

 Procketはルーティングチップとソフトの開発に関する専門知識を有している。Ciscoは、今回の買収により「豊かな知的財産ポートフォリオ」と「実績ある」半導体・ソフト設計者のチームが同社のルーティング技術・製品に加わることになると述べている。

 Ciscoのルーティング技術部門上級副社長兼ジェネラルマネジャー、マイク・ボルピ氏は発表文で次のように述べている。「Procketの技術者チームが加わることで、当社の次世代ルーティングポートフォリオ全般にわたって半導体とソフトの開発を促進するまたとない機会となる。Procketは平均して15年以上の経験を持つ、世界で一流の高度な半導体、ソフト、ネットワークシステムの設計者を抱えている。こうした人材が当社の世界クラスの技術者チームに加われば、ネットワークインフラの継続的な革新を推進する後押しとなるだろう」

 しかしながら、今回の取引は興味をそそるものだ。Procketは昨年、「PRO/8800」ルータを発表し、コアルーティングにおいてCiscoのライバルとして浮上した。Dell'Oro Groupによると、2004年1〜3月期の10Gbpsコアルータ市場におけるProcketのシェアは約2%。

 Ciscoの広報担当者は、同社はProcketの製品、顧客契約、法的責任、負債、不動産は獲得しないとしている。

 また同社は数週間前に、次世代コアルータ「CRS-1」を大々的に発表したばかりだ(5月26日の記事参照)。同社はCRS-1の登場を、20年の歴史を持つ同社における自社開発ルータの新時代の始まりだとうたっていた。同製品は4年の歳月と5億ドルをかけて開発され、IBMとの共同開発による40Gbpsのシリコンパケットプロセッサ(SPP)、QNX Software Systemsから獲得したカーネルを使ったモジュール式OS「IOS-XR」が目玉となっている。

 CiscoとIBMは、このSPPは「世界で最も洗練された40Gbps ASIC(特定用途向け集積回路)」と主張しているが、今はProcketの半導体技術がこのSPPの将来に影を落としている。またProcketは自社ルータ用のモジュール式OSを有しており、IOS-XRの寿命にも限りが見えそうだ。

 Ciscoの広報担当者は、ProcketのCOTS(Customizable Off-The-Shelf)開発における専門知識は、CiscoのSPPと同社独自のCOTS開発の両方を補完するだろうとしている。Procketの技術は、エンタープライズ・サービスプロバイダーエッジ向けの7200シリーズから、インターネットエッジ・コアルータ向けの12000シリーズまで、Ciscoのルーティングポートフォリオの大部分を刷新すると見られる。

 CiscoとProcketのライバルは、今回の取引を喜んでいる。

 Aviciの上級マーケティングマネジャー、ハドソン・ジルマー氏は次のように語っている。「Ciscoが社外の技術を必要としたということは、CRS-1に根本的な問題があるということを示している。同社の開発設備にはどこか壊れたところがある。同社は今や3種のプラットフォーム(IOS IOS-XR、ProcketのPRO/1)を手にしている。これは顧客を混乱させるだろう」

 「Procketは資金を使い果たしていた」と創業4年のコアルータメーカーAxiowaveのCEO(最高経営責任者)兼創設者マケシュ・チャッター氏。「Procketの製品はベストエフォート(アプリケーション)に適していたが、1998〜1999年はそれが問題だった。この製品ではキャリアが利益を出せるようにならなかった。同社はステロイド剤を打ったJuniperのようなものだった」

 今回の取引の下、CiscoはProcketの知的財産ポートフォリオ全体を所有する。Procketの創設者兼CTO(最高技術責任者)ビル・リンチ氏を含む技術者は、Ciscoのルーティング技術部門の所属となり、上級副社長のボルピ氏とプレム・ジェイン氏の指揮下に入る。リンチ氏は半導体イノベーターであり、Sun MicrosystemsのUltraSPARC IVの主任設計者を務めていた人物。

 Procketで働いていたCiscoの元技術者17人はすべて、再びCiscoに戻ることになると広報担当者は語る。ProcketのCEOで、元Ciscoのサービスプロバイダー担当CTOだったローランド・アクラ氏は、Procketの資産がCiscoに吸収されるまでは雇用契約を続ける。同氏はその後、ほかの活動に移るという。

 今回の資産買収は、さまざまな標準的な完了条件をクリアし、規制当局の承認を受けなくてはならない。買収完了はCiscoの2005年会計年度の第1四半期(8〜10月)の見込み。

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