RFIDによる流通現場の革新にサンがさらなる取り組み

サン・マイクロシステムズは無線ICタグ(RFID)の構築実証センター「Sun RFIDデザインセンター」を7月1日付けで東京・用賀に開設すると発表した。

» 2004年06月23日 16時35分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 サン・マイクロシステムズは6月23日、都内で記者発表会を行い、無線ICタグ(RFID)の構築実証センター「Sun RFIDデザインセンター」を7月1日付けで東京・用賀に開設すると発表した。RFIDは、企業の流通現場における在庫管理などが飛躍的に効率化するテクノロジーとして期待されており、RFIDチップから管理インフラまで、導入を検討する企業は同技術の検証をサンの同センターで無償で行うことができる。

 同社日本法人のダン・ミラー氏は、「RFIDが普及することにより、兆単位のモノがインターネットにつながる可能性が出てきた」と話す。同氏は、単に製品がインターネットにつながっているだけでは意味がなく、収集されるデータをいかに管理し、利用するかを考えながらネットワーク化していく必要があると説明した。

日本法人のダン・ミラー社長

 米Sunは、1999年に設立されたAuto-ID Centerに5番目のスポンサーとして2000年に参加している。Auto-ID Labsでの仕様の策定、Auto-ID Centerのパイロット実証実験にも貢献してきた。また、社内でもRFIDの利用を進めている。さらに、「RFID Test Center」を、Wal-Martの納入業者向けにテキサス州ダラスに開設、スコットランド、そして東京にも開設することになった。

 同社は、チップ・マルチスレッディング(CMT)およびSolarisというシステム面、Liberty Alliacneによる認証技術、N1Gridによる管理、Javaによる開発という基幹となる同社の技術を生かして、RFID導入におけるエンドツーエンドのインフラを積極的に提供していく考えだ。

 技術面の説明や、日本における取り組みについて話した同社テクノロジー&ソリューション統括本部執行役員、植松裕次氏は、「質の高いなインフラを提供し、その上でERPおよびSCMベンダーなどのパートナー企業が安心してシステムの実装作業を行える環境を提供したい」と話した。

 同社が推進するSun EPC Networkのアーキテクチャは、まず、複数の製品を積んだパレットにタグが付けられ、それがRFIDリーダーに読み込まれるまでが第一段階。そして、読み込まれたデータであるEPC(Electric Product Code)が、RFID Event Manager(Sun Java System RFID Software)に送られる。RFID Event Managerは、ERPやSCM、倉庫管理システムなどのエンタープライズアプリケーションと連携しており、EPCが、それぞれのアプリケーション上で利用されることになる。

 例えば、SCMアプリケーションならば、収集されたEPCデータによって判明した各店舗の販売実績や、製品別の返品数といった各種データを基に、次の需要予測や生産計画の立案などを行うことになる。こうした詳細なデータを取得するためのリードタイムは、RFIDによって以前よりもずっと短くなるため、結果として、より正確な需要予測、生産計画の立案につながる。

 さらに、欠品率や返品率の改善につながれば、製造業や流通業者にとっての財務的なメリットは計り知れないほど大きい。さらに、単品レベルで在庫の管理が行えれば、売れ筋、死に筋商品の把握も正確かつ迅速に行えるため、マーケティング戦略や新製品開発にも効果を発揮する。すなわち、業務プロセスの可視化が、RFID導入の最大の効果であり、サンもこうしたニーズに応えたいとしている。

 もちろん、従来もバーコードを利用して、同様の取り組みが流通現場で行われていた。だが、RFIDは、リーダーを通るだけで瞬時にデータを読み取れる点が、バーコードと決定的に異なっている。ただし、データの読み取り精度の問題や、読み取ったデータをデータベースと同期させる作業、タグの単体あたりのコスト負担がまだまだ大きいことなど、RFIDの実際の利用にはまだまだ課題が残されている。人の意思に関わらず、リーダーがデータを読み取ってしまうことによるデータへの信頼性、またはプライバシーを侵害するリスクなども挙げなくてはならない。

「これまでは実証実験が中心だったが、今後1〜2年で導入ユーザーはかなり増加すると見込んでいる」(植松氏)

テクノロジー&ソリューション統括本部執行役員、植松氏

 Sun RFIDデザインセンターでは、ハードウェア、システムインテグレータ、ISVの各パートナーの協力により、オープンなソリューションを提供していくという。既設のiForce Solution Centerのサーバやストレージのほか、協賛各社のRFID関連機器やSCMやデータベース、ビジネスインテリジェンスといったソフトウェア、サンのエンジニアによるサポートも提供される。

 これまで、国内でサンが参加した実証実験としては、コンテナの物流実験、書籍物流デモシステム、NTTコミュニケーションズや凸版印刷、三井物産戦略研究所など複数企業間でのサプライチェーンマネジメントの実証実験システムを実施した。最近では、手ぶら旅行を実現するための成田空港での「次世代空港システム技術研究組合(ASTREC)」にも参画していることが紹介された。

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