米国時間の6月28日、JavaOne 2004 San Franciscoが開幕した。すがすがしい朝を迎える中、ダウンタウンをモスコーニコンベンションセンターへと足早に向かうデベロッパーらが列をつくる。Sunのシュワルツ社長兼COOは、オープニングキーノートでJavaエコノミーの繁栄をうたい、JavaやSunへの支持をデベロッパーらに求めた。
Javaエコノミーの力強い成長 ── Javaの正式デビューから9年を経たJavaOne 2004 San FranciscoでSun Microsystemsのジョナサン・シュワルツ社長兼COOは、「コミュニティーの共栄」をテーマにオープニングキーノートを行った。
うだるような東京からサンフランシスコにやってくると、この時期が当地のベストシーズンであることがよく分かる。米国時間の6月28日、多少涼しいものの、名物の霧もない。むしろすがすがしい朝を迎える中、ダウンタウンをモスコーニコンベンションセンターへと足早に向かうデベロッパーらが列をつくる。ネットバブル期の熱狂は冷めたが、それでもJavaの聖地で開かれるJavaOneは特別だ。
この4月、社長兼COOに就任したばかりの若きジョナサン・シュワルツ氏は、Javaエコノミーの繁栄をうたい、JavaやSunへの支持をデベロッパーらに求めた。
「(Javaによって)すべてのモノ、すべての人がネットワークにつながる。これはSunだけのビジョンではない。世界のビジョンなのだ」とシュワルツ氏。
シュワルツ氏によれば、現在17億ものデバイスがネットワークに接続されており、さらにRFIDタグの普及によってその数は想像を超える伸びを見せるという。しかも、単なる技術ではなく、事業機会も生まれている。彼がしばしば引き合いに出す「着メロ市場」は、その典型的な例といえる。その市場規模は35億ドルとみられ、30億ドルの携帯ゲームと並んで巨大市場となっている。Javaを搭載した携帯電話は3億5000万台に達しており、「ゲームの開発費は数日で回収できてしまうほどだ」と彼は強調する。
Microsoftと和解したSunにとっては、PCも重要なデバイスだ。台数は、6億枚に達しているJava Cardよりもさらに多く、6億5000台という。
今回のJavaOneでJava 2 Platform Standard Edition(J2SE)5.0(コードネーム:Tiger)を正式発表したせいもあるのだろうが、シュワルツ氏は「モバイルへと流れていたうねりが再びデスクトップへと回帰している」と話す。このところ、セキュアなモビリティを確保したSun RayやJava Desktop Systemを売り込んでいることからも、あながちご都合主義ともいえない。
こうしてみると分かるとおり、Javaエコノミーの繁栄は、「ubiquity」(遍在)から始まっている。しかし、例えば、携帯電話の規格がばらばらでは消費者は飛びつかないし、何よりもデベロッパーやコンテントクリエーターらが支持しない。シュワルツ氏は、互換性のある遍在がデベロッパーらの創造力を引き出し、さらには通信事業者らの市場開拓を後押しすると話す。
しばしばシュワルツ氏は、「ウォール街は携帯電話のサービスモデルを信じなかったが、実際には……」と自慢げに話す。消費者は、無料で配布された端末ではなく、ネットワークサービスに価値を見出しているのだ。
「次は自動車だと私は予想する。コミュニケーションやエンターテイメントのサービスが始まれば、何十億ドルというビジネス機会が生まれる。もしかしたら自動車がタダで配られるかもしれない(笑い)」とシュワルツ氏。
シュワルツ氏の大胆な予想が再び現実のものとなるかは別として、Sunもソフトウェアやハードウェアの販売に購読(サブスクリプション)モデルを取り入れている。
この日、正式発表されたVisual Basic対抗のビジュアル開発ツール、「Java Studio Creator」は、Sun Developer Networkプログラムに新たに追加された年間99ドルのStandardメンバーと同699ドルのProfessionalメンバーには無償で提供される。
また、J2EE開発環境であるJava Studio Enterpriseのサブスクリプションを3年契約する新規のSun Developer Networkメンバーには、年間1499ドルの割引価格を適用するだけでなく、AMD Opteron搭載のw1100zワークステーションが無償提供されるプログラムも新たに発表されている(従来はSun Fire V20zサーバのみのプログラムだった)。
オープニングキーノートのあとに行われたプレスQ&Aセッションでシュワルツ氏は、「世界は購読モデルに向かっている。デベロッパーはわれわれの貴重な資産。売り切りではなく、長期的な関係を築いていきたい」と狙いを話した。
Sunでは、昨年9月のSunNetworkカンファレンスでベールを脱いだJava Enterprise System(コードネーム:Project Orion)が「従業員一人当たり年間100ドル」という単純明快、かつ極めて安価な購読モデルを採用している。さらにこの6月上旬のSunNetwork Shanghai 2004では、「市民一人当たり年間33セント」という破格の値付けまで飛び出したほか、データセンター向けの100以上のサービスを1つにまとめ、購読モデルで提供しようという「Sun Preventive Services」や、使用量に応じて料金を支払うユーティリティー型のストレージソリューション「Sun Utility Computing for StorEdge Systems」も発表されている。
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