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» 2004年07月21日 18時09分 公開

「2020年にはソフトに完全に依存した生活に」とブーチ氏、基調講演でIBM RSDC 2004 Report

将来的な開発現場では、プログラムを知らない人も交えた開発スタイルとなる――ブーチ氏はこう語り、これまでのIBMの歩んだ道のりと、今後のソフト開発の重要性を説いた。

[西尾泰三,ITmedia]

 テキサス州グレープバインで開催中の「Rational Software Development User Conference 2004」。二日目となる米国時間7月20日の朝、基調講演にIBMフェローのグラディ・ブーチ氏が登場し、これからのビジョンを語った。

ブーチ氏。かつてBooch法で美しい可視性表記を考えた彼は現在、数少ないIBMフェローとして活躍している

 ブーチ氏といえば、イヴァー・ヤコブソン氏、ジェームズ・ランボー氏とともにUML開発の中心となった「スリーアミーゴ」の一人。自身が18歳まで過ごしたテキサスの地で、これまでIBMが歩んできた道のり、そしてコンピューティングの歴史、さらには今後の予測を述べた。

人類が作成したプログラムコードは1兆ラインを突破

 ブーチ氏は、昨日のデブリン氏と同様、ソフトウェアの開発は非常に重要なものだと主張する。これまで人類が作成してきたプログラムコードは1兆ラインを優に超えており、昨年だけでも330億ラインが生み出されたという。デベロッパーの数で割ると、一人当たり5000ライン/年のコーディングを行っていることになる。

「生み出されたコードは私たちの生活を大きく変革してきており、また今後もそうであると予想される故に、ソフトウェア開発者は責任がある」(ブーチ氏)

 これまでIBMが歩んできた道のりを振り返ると、実に1911年にC-T-Rが設立されたころまでさかのぼる。その後、さまざまな時代を彩る製品や技術の誕生とともにIBMも成長を続けてきた。ブーチ氏による各時期のタイトルは次のようなもの。

ブーチ氏が示した各年代の性格(クリックで拡大します)

2020年代にはソフトに依存した生活に

 同氏は2020年代にはソフトウェアなしの生活は考えられず、生活のすべてをソフトに依存してしまうことになると予想、そして2031年までには、生活もITもさらに大きく変わるだろうとブーチ氏はさまざまなデータを交えて話す。

 生活に関しては、先進国は出生率の低下による開発者数の減少、世界規模の水不足、経済のブロック化、バイオメトリックの普及、情報の氾濫による暗黒時代の到来など憂慮すべき項目が多くあげられる。

 パーソナルアシスタントの技術ではデモも交えた。同技術は言葉通り個人の能力をサポートするもの。ブーチ氏は「年はとりたくないものだね。物忘れがひどくなってしまう」とおどけ、眼鏡型のデバイス(というより眼鏡そのものだが)をかけた。このデバイスを通して見る女性アシスタントの横には、その名前などの付加情報がオーバーレイで表示された。

パーソナルアシスタントのデモを見せるブーチ氏。観客は大型のディスプレイに映し出されたブーチ氏の視点を見ることができた

 一方ITに関しては、ムーアの法則は早々に崩壊し、OSはコモディティ化、ソフト開発は物理的な距離を越えたチーム開発が主流になるといったものである。

「Javaは最後の言語なんかではない。2031年の世界は2004年時点で誕生していないプログラムによって創造されるのだろう。プログラミングはオブジェクト志向のパラダイムで進み、アスペクトが主流となるように思える。また、『シムズ』の中で起こっているような犯罪が、現実の世界で起こってくるだろうね」

 また、ブーチ氏は、ソフトウェアエンジニアリングの根っこの部分は、年月がたっても変わるものではないとしながらも、開発現場では大きな変化が見られそうだと話す。

 さまざまな技術が融合していく結果、例えばバイオメトリクスの専門家ではあるが、プログラミングはできない、といったソフトウェア開発を専門としない人が専門性を生かした形で開発に加わることになるという。コミュニケーションツールの発達により、そこでは物理的な距離を問題としなくなるのも特徴だ。そのほか、特許に関しても、デベロッパーは開発に際して、利用するコードに法的な問題がないかどうか、弁護士と相談しながらコードを使う時代になっていくのではないか、と警鐘を鳴らす。

 とはいえ、ブーチ氏はそんな社会を悲観しているわけではない。むしろ、デベロッパーには楽しんでもらいたいという。

「ここにいる皆さんを含め、われわれは世界が依存する部分に従事している。依存する部分だけに、その品質に関する要求は今後いっそう高まることになる。IBMはパッションを持って効果の高い楽しいものを提供する。皆さんは、プログラミングを楽しんでもらいたい」(ブーチ氏)

 最後にブーチ氏は、「2031年はラショナルが誕生して50周年となる年でもある。その時をここにいる皆さんとともにこの場所で再び祝えたらすばらしいと思う」と残し、盛大な拍手に送られてステージを降りた。

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