1年2カ月ぶりのアップデートとなったE-Business Suite 11i.10で、Oracleは統合機能の強化や業務特化型機能を前面に押し出している。SAPとの差を縮めたい同社だが、11i.10でOracleはどのような戦略をとるのか。
Oracleは9月6日、英ロンドンで開催した「Oracle OpenWorld London 2004」にて最新の業務アプリケーション「Oracle E-Business Suite 11i.10」を発表した。1年2カ月ぶりのアップデートとなったEBS 11i.10で、Oracleは統合機能の強化や業務特化型機能を前面に押し出している。業務アプリケーション市場は、各地域によりシェアは異なるものの老舗の独SAPが大きなシェアを持つ。SAPとの差を縮めたい同社だが、11i.10でOracleはどのような戦略をとるのか、業界全体の課題である成功する実装のために同社の取り組みは何か、同社ERPマーケティング担当副社長、フレッド・スチュデュー氏に話を聞いた。
ITmedia 「EBS 11i.10」でのOracleのメッセージを教えてください。
スチュデュー氏 11i.10では3つのフォーカスがあります。1つ目が業界特化型機能です。まず、成長の機会がどこにあるのかを探るため、20の業界についてトップの企業がどのように技術を利用してビジネス上の課題を解決しているのかを調べました。それと同時に、課題解決のためにOracleに何ができるのかを考えました。次にこの作業を地域別にも展開しました。例えば、アジアでは製造業で動きが活発ですし、欧州ではヘルスケア、公共セクターです。
このように、11i.10では開発時間の50%を業界特化機能の開発に割きました。これら20の業界はすべて何らかの業界特化機能がありましたが、Oracleは成長があると判断した部分に対してさらなる機能を開発することにしました。中でもヘルスケアは高い成長を示しており、課題も多かった分野です。
2つ目は、EBSを水平に拡大することで幅も広げました。人事や財務などの業界共通の機能に対しては、機能の追加、自動化、使いやすさなどの強化を行いました。
例えば、財務では、受取勘定に関してプロセスを容易に、かつ効率的に行えるよう開発しました。企業が未払い金回収にかかる期間を示す共通の指標として「Days sales outstanding」(DSO)があります。11i.10では、DSPがすぐに有効となるようにしました。顧客に支払ってもらうには、納品を確認し、請求書および支払い期限を確認してもらわなければなりません。顧客にそれらの情報をオンラインで提供し、受取勘定もオンラインでできるようにするなど、柔軟性を持たせました。
3つ目は統合で、これは重要な点です。すべての企業は、自社開発のシステムやOracle以外のシステムを持っています。Oracleは今回、非Oracle技術と、データベースとアプリケーションの両レベルで統合するため、多くの統合機能を追加しました。例えば、Oracleの財務アプリケーションと他社の人事アプリケーションを連携して、従業員の給与情報を追跡して賃金台帳に記録することができます。
また統合により、Oracleが提供しない特化型のポイントソリューションを提供するパートナーがOracleのシステムに参加できる仕組みが生まれます。このように、顧客の持つ問題をすべて解決するという点で、統合は不可欠です。
この3つに共通しているOracleのメッセージは、「ビジネスに関する質の高い情報を提供する」ということです。
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