EBS 11i.10の方向転換は「痛みを取り除き、質の高い情報を提供するため」とOracle幹部Interview(2/2 ページ)

» 2004年09月08日 13時03分 公開
[末岡洋子,ITmedia]
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「スイート路線」の転換?

ITmedia 統合は、これまでの「スイート」とは異なるアプローチといえます。Oracleは戦略を変更したということでしょうか?

スチュデュー氏 顧客の痛みを解決し、質の高い情報を得るということを実現するのがOracleの望みです。これを実現する唯一の方法が、統合です。システムが分断化していた場合、これは不可能です。

 引き続き、「Oracleで統一するのが最善の策」という基本メッセージは同じです。ただ、大企業では現実的ではなかったといえます。これまでも統合機能は提供していました。11i.10では使いやすくするなど、大きなフォーカスを当てたといえます。

SME市場への取り組み

ITmedia これまで大企業を中心に導入が進んできたERPですが、数や割合の上で大企業より多い中堅および小規模の企業(SME)市場をどうみていますか?

スチュデュー氏 SME市場は、特有の課題が多い市場です。まず全体の傾向として、過去2、3年、ユーザーはスマートになっています。以前は技術が優れていれば売れましたが、いまはそれだけでは売れません。ベースとなる技術、実装は容易か、柔軟性はあるのか、ROIはどのくらいか、どのような情報を提供してくれるのか、などさまざまな決定要因があります。

 SME市場は、これに加えて特有の課題があります。規模が小さいために柔軟性が重要になりますし、IT予算も限られています、実装を待つ余裕もありません。さらにはITスタッフが不足していることもあります。でも機能の面から見ると、SMEも大企業も、求めているものは同じです。ではどうするか。さまざまなデリバリー(提供)モデルを提供する、というのがOracleの回答です。

 Oracleでは3年前からアウトソーシングサービスとして「Oracle OnDemand(旧製品名はOutsourcing)」を提供しています。Oracle側で保守・運用を行うことから、顧客はアップグレード、パッチ適用などの心配は不要です。車にたとえるなら、車を購入した場合、毎日その車の価値は下がります。タイヤを変えるとさらにコストが生じます。でも毎日新しい車がレンタルできればどうでしょう?

 もちろん、このデリバリーモデルが全企業にフィットするわけではありません。金融機関には当てはまらないでしょう。OnDemandは、ビジネス上の問題をできるだけ早くできるだけコストを抑えて解決し、標準的なソリューションを求める企業に適しているといえます。

ITmedia ERP実装に不満を持つ企業は2割ともいわれています。成功する実装について、Oracleの意見を聞かせてください。

スチュデュー氏 まず、実装をできるだけ容易に、痛みのない形で実現するように努めています。

 次に、教育です。実装して機能を持っても、その技術をどうやって使うのかを理解していないと、持っていないに等しいといえます。われわれはパートナーと顧客と蜜に協業して、Oracleのアプリケーションや技術をどのように使うのか、どうすればアプリケーションが問題を解決してくれるのかについて教育を行っています。

 究極的には、顧客とベンダーの関係を、Win-Winのパートナーシップに変えていくことだと思っています。ソフトウェア企業にとって製品を提供するということは、一度きりの関係ではなく、いわば結婚です。両方がハッピーにならなければ意味がありません。

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