さらに、コンビニエンスストアでは、長時間営業を支えるために、人件費を圧縮することが課題として挙がった。これを解決するため、オーナー1人を中心にして、アルバイトの店員でも店舗を運営するための高度なマニュアルが開発された。マニュアルをベースに、発注、検品、廃棄などの業務一つひとつに明確な処理ルールが設定され、運用の仕組みが標準化された。これにより、だれが作業をしても、一定以上の品質を維持できるようになったのだ。
また、商品の販売だけでは、坪当たりの売り上げの伸びに限界があることもコンビニエンスストアにとっての悩みの種だった。この課題には、保管するスペースを必要としない在庫レスアイテムを作り出すなどのアイデアで対応。
一方、利益を確保するための取り組みとしては、メーカーとの共同開発による独自ブランドの創出など、外部との連携も強化していった。
コンビニエンスストアは、各店舗の独立採算色が特に強く、本部と各加盟店が確実に利益をシェアするためには、システム化によって業務の効率性改善を追求することは避けて通れなかった。加盟店のオーナーと一緒に業績向上に取り組むというビジネスモデルにおいて、経営支援担当者は、双方が利益を得るために、経営のメカニズムを盤石にすることが求められた。
やがて、標準化によって店舗数が拡大、数千店舗から1万店舗にわたる巨大なネットワークシステムが確立された。小規模オペレーションが、チェーン化を促進することにより、ほかの大型チェーンでは見られない巨大なパワーを発揮することになった。例えるならば、コンビニエンスストアは、情報武装した最新の駆逐艦として動き回り、大砲を装備した巨艦を一隻ずつ沈めていったとも表現できる。
次回は、今後の消費流通ビジネスがITによってどのように変化していくのか。小売業界を取り巻く構造問題などの経済的な側面も併せて考えていく。
著者:松吉章氏(アール・エス・アイ代表取締役、アクチャ−コンサルティング・エグゼクティブコンサルタント)
日本NCRで商品管理などのPOS・EDPシステム営業に従事した後、システム企画販売企業を経て、アール・エス・アイを設立。大手コンビニエンスストア向けの店舗情報企画やPOSシステム企画、EDI業務企画コンサルティング、CRMコンサルティングなどに取り組む。POSデバイスインターフェースの標準化を推進するESOGや、ARTS(Association for Retail Technology Standards)などの標準化団体の日本代表、流通システム開発センターの委員なども歴任。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.