IBMとBorlandが開発ツールをアップグレード

IBMが新しい「Rational」開発ツールを発表する一方で、BorlandはWindows開発ツール「Delphi」の新バージョンを披露した。どちらもビジネスプロセス自動化技術を組み込む方向性を打ち出した。

» 2004年10月14日 20時50分 公開
[IDG Japan]
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 Borland SoftwareとIBMは今週、それぞれの開発ツールのアップグレードを発表した。異種混合環境をサポートするとともに、ソフトウェア開発と業務目標を密接にリンクするのが狙いだ。

 IBMが新しい「Rational」開発ツールを発表する一方で、BorlandはWindows開発ツール「Delphi」の新バージョンを披露した。今回の発表で両社はともに、企業のコア製品の設計や製造などの業務で広く利用されているビジネスプロセス自動化技術をそれぞれのプラットフォームに組み込む方向性を打ち出した。

 IDCのアナリスト、メリッサ・ウェブスター氏は、「IT部門では今日、新しいアプリケーションの開発や配備のことだけを考えるのではなく、ITプロジェクトの優先順位付けといった問題や、IT資産やITリソース全体をいかに組み合わせてビジネス価値の創出につなげるかなどを戦略的に考えるという新たな飛躍が求められている」と指摘する。

 IBMは今週、同社のRational開発ツールはすべて、オープンソースの「Eclipse 3.0」フレームワークがベースになることを明らかにした。「これにより、モデリング、テスト、要件管理のためのツールがより深いレベルで統合され、これらのアプリケーション構築手段を一貫性のある形で利用できるようになる」とウェブスター氏は説明する。

 IBMはさらに、Rational製品群に含まれる「Portfolio Manager」のほか、「Software Architect」「Software Modeler」「Manual Tester」といったツールも発表した。

 Software Modelerは、UML(Unified Modeling Language)2.0に対応したビジュアルモデリング機能を提供し、システムをさまざまな視点から文書化/表現することができる。IBM Rational部門では、同社のモデリングソリューションの「IBM Rational Rose」および「IBM Rational XDE」も引き続きサポートする方針。

 「ユーザーがソフトウェア開発プロセスを戦略的な視点でとらえるのを支援するという点で、IBMは有利な立場にある」とウェブスター氏は話す。

 「Rationalは早くから、ソフトウェア開発プロセスとライフサイクル管理の統合がもたらす福音を説いてきた。IBMは、ソフトウェア開発プロセスに携わるチームの間の障壁を取り除くことが非常に重要であることを明確に理解している」(同氏)

 IBMはJava開発者および.NET開発者をサポートするために、既存のRationalツールに新機能を追加した。「IBM Rational Web Developer for WebSphere」(従来名称はWebSphere Studio Site Developer)および「IBM Rational Application Developer for WebSphere」(従来名称はWebSphere Studio Application Developer)には、各種タスクを自動化したり、手作業でのコーディングを減らすことによってJava開発を簡素化するための機能が組み込まれる。「Rational Functional Tester」には、テストのカスタマイズ機能など.NETユーザーをサポートするための機能が含まれる。

 一方Borlandは今週、自社のWindows開発ツールの最新版となる「Delphi 2005」を発表した。Win32、.NET、DelphiおよびC#のサポートを単一の開発環境で実現するほか、Borlandのアプリケーションライフサイクル管理ツールとも連携する。

 これまで「Diamondback」のコードネームで呼ばれてきたDelphiの新バージョンには、ビジネスプロセスの自動化技術をソフトウェア開発ツールにも適用することを目指したBorlandの包括的プラン「Software Delivery Optimization」をサポートする狙いがある。

 カリフォルニア州スコッツバレーに本社を置くBorlandで開発ツールを担当する製品マーケティングディレクター、マイケル・スインデル氏は、「新たなWindows開発環境の実現と、より現代的なアーキテクチャへの移行の両方を視野に入れて最適化するというビジョンを持ったWindows開発ツールが登場したのは、これが初めて」と話す。

 コネティカット州スタンフォードにあるGartnerのアナリスト、マーク・ドライバー氏によると、BorlandはIBMとMicrosoftが提供している総合開発プラットフォームに代わる選択肢をDelphi 2005で提供するつもりだという。「MicrosoftとIBMの両社のアプリケーション開発プラットフォームを使っている多くの企業は、両スイートに含まれるテスティング、品質保証、ソースコード管理といった機能が、必要以上に複雑さをもたらすと感じている」と同氏は指摘する。

 「両陣営にまたがってアプリケーション開発を行っている企業は、MicrosoftやIBM Rationalの製品には欠けている一貫性、統合、連携という面においてBorlandのスイートに価値を見いだすかもしれない」とドライバー氏は話す。

 「Borlandはこの業界で生き残っている非常に数少ないツール専業ベンダーの1社であり、両方の陣営をサポートしなければならない立場にある。一方のプラットフォームと他方のプラットフォームとの間のコネクティビティソリューションを提供するという点では、BorlandはMicrosoftやIBMよりも積極的だ」(同氏)

 アリゾナ州チャンドラーにあるSucceedのオマー・サイードCEOは、Delphiを使ってデータの保存とオンラインオークションの運営用の商取引プラットフォームを顧客向けに開発した。Win32、.NETおよびC#を単一環境でサポートするといった新機能は、「わざわざ異なる環境の間で機能を結び付けなくても何ができるのかという点に関して、より大きな視野を社内開発者に与えるものだ」とサイード氏は話す。

 Delphi 2005は来月に出荷される。「Architect Edition」の価格は、新規ユーザーの場合が3000ドルで、アップグレードは1999ドルとなっている。「Enterprise Edition」の価格は新規ユーザーが2500ドルで、アップグレードの場合は1500ドル。「Professional Edition」の価格は新規ユーザーが999ドルで、アップグレードは399ドル。

 IBMの新製品はすべて、年末までにリリースされる予定。価格は1ユーザーに付き1000ドル(IBM Rational Web Developer for WebSphere Software)から5000ドル(Rational Software Architect)となっている。

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