「経営のリアルタイム化」に向け日本オラクルが新戦略

日本オラクルはERPの最新版「Oracle E-Business Suite 11i.10」を11月30日にリリースすると発表した。

» 2004年10月20日 15時36分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 日本オラクルは10月20日、都内のホテルで記者発表会を行い、ERPの最新版「Oracle E-Business Suite 11i.10」を11月30日にリリースすると発表した。Oracleデータベース(DB)のシングルデータモデルを核とする、ビジネスインテリジェンス機能の実装などが、機能的な特徴として挙げられた。また、新製品を核としたアプリケーションビジネスにおける新たな戦略について、製造や金融、医療など、インダストリー別の取り組みを強化していくことも併せて明らかにしている。

新宅正明社長

 Oracle E-Business Suite 11i.10の各機能は、既にモジュール単位で幾つかリリースされている。具体的には、7月に、分散した顧客情報を統合管理する「Customer Data Hub」、9月には、購買調達システムと、CRMシステム、10月に入って、コンプライアンス支援アプリケーション経営分析システムICタグに対応した倉庫管理システム、そして、昨日は、人事管理システムが発表されている。

 新宅正明社長は、これまでのERPへのユーザーの認識について、第1世代はベストプラクティス、第2世代はバリューチェーンの構築がテーマだったと述べる。そして、「経営環境の変化にいち早く次の一手”を打つリアルタイムエンタープライズの実現」が第3世代におけるキーワードになると話した。

 E-Business Suite 11i.10を中心とした新戦略で同社が最も力を入れているのは、ビジネスインテリジェンス(BI)の活用により、ユーザー企業にリアルタイムな経営環境を提供すること。この日も、同社のBIアプリケーションである「Daily Business Intelligence」(DBI)の機能がデモンストレーションを交えて紹介された。

 DBIは、E-Business Suite上のデータを、業績管理情報として有効活用するためのツール。ユーザーは、事前に定義したKPI(Key Performace Indicator)や定型帳票をポータルの画面から参照することができる。

 例えば、経営者なら、業績情報について、四半期などのスパンではなく、その日の業績を前年の同じ日の業績と比較するといった、細かいレベルにブレークダウンした形で参照することが可能になる。リアルタイムに必要とする指標を参照できるため、経営者は、自社のビジネスの状況を常に把握し、問題があればすぐに対応できる。

 また、同社は、「BIはデータウェアハウスの構築が前提」という通常の認識を、DBIが打破したとアピールする。

 通常、BIツールを利用するためには、分散したさまざまなトランザクションデータベースから、ETLツールを利用して必要なデータを抽出、変換して、参照用のデータベースに移行させることで、データウェアハウス(DWH)を構築しなくてはならない。BIツールは、DWHの情報を参照して、各種の指標情報をポータル画面に表示することになる。

 一方で、DBIの場合は、参照用データベースとしてのDWHを新たに構築する必要がなく、Appsのインスタンス上で、トランザクション処理だけでなく、参照用データの蓄積とレポートの生成も行えるという。

 これは、「Oracle 9iDBを活用することで可能になった技術的ブレークスルー」という。9iのMaterialized Viewによる差分データ更新ができるようになったことが1つ。また、9i RAC(Real Application Clusters)によって、トランザクション処理と参照処理の間に起こる競合を解消したことも要因となっている。

 ユーザー企業はこれにより、集約されたデータから明細データまで、さまざまなデータソースの情報を一貫したデータモデル上で利用できる。つまり、「業績情報」などの集約データを参照しながら、気になる点、例えば「ある個人の10月の経費の使い道」といった個別の情報にまでドリルダウンして参照することができる。

 企業全体としては、ビジネス部門間で一貫性のある情報基盤が確立することにより、意思決定の迅速化、タイムリーな情報提供を図れるようになるという。

Daily Business Intelligenceの画面

業種別ソリューションへの取り組み

 この日は、Oracle E-Business Suite 11i.10リリース後のアプリケーション戦略において、同社が業種別ソリューションを強化することも紹介された。

 取締役で、インダストリーセールス&コンサルティングサービス担当の東裕二氏によると、今後、業種別に専門チームを構築し、業種別ソリューションを強化、またコンサルティング部門との統合も行うという。営業担当者70人、エンジニア100人の体制を想定している。

 また、製品面でもOracle E-Business Suite 11i.10では、業種ごとにさまざまな機能的な拡張が行われている。

 会計モジュールであるFinancialsでは、利息の前払いへの対応や休日調整、現金返済のスケジュール展開の自動化など、財務管理関連で、日本のユーザー向けの機能が盛り込まれた。SCMや人事モジュールにも、同様に日本向けの機能が追加される予定としている。

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