オラクルのデータ中心モデルは経営のリアルタイム化と新たな価値をもたらす

オラクルは新しいOracle E-Business Suite 11i.10でインテグレーション機能を強化したほか、「Oracle Customer Data Hub」という第3の道も用意した。単一のデータモデルを核とし、柔軟にビジネスプロセスを定義できる「Oracle Information Architecture」はライバルたちにはない大きな強みだ。

» 2004年10月21日 21時01分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 「リアルタイムエンタープライズ」── オラクルが目指すのは、トランザクションのリアルタイム化だけでなく、意思決定も迅速にし、企業が変化に即応できるよう支援することだ。

 最近のIT業界には、「オンデマンド」をはじめ、「変化に即応できる能力」をアピールするキーワードが多い。「Real-Time Enterprise」もGartnerが2002年秋に発表したものだ。その定義を要約すれば、「さまざまなビジネス上の変化を監視、捕捉、分析し、その情報を活用することによってビジネスプロセスの管理と実行における遅れをなくし、競争を優位に進める企業」で、オラクルの伝えたいメッセージとほぼ同じだ。

 「データベースが単にそのパフォーマンスをアピールするのではなく、オラクルは技術や製品によって“リアルタイムエンタープライズ”実現の支援を目指したい」と話すのは、日本オラクルでE-Business Suiteのマーケティングを担当する吉田周平氏。

 10月21日、都内で行われた「Oracle Applications Forum 2004」でも「ビジネスに、確かな力を」がテーマとして掲げられ、前日発表されたばかりのOracle E-Business Suiteの最新バージョン11i.10の概要とともに、「データやビジネスプロセスの統合」による経営のリアルタイム化が創り出す新たな価値が新宅正明社長から語られた。

自慢の技術でデータを統合

 リアルタイムエンタープライズに込められているメッセージを平たく言い換えれば、「最新情報を活用し、より良い意思決定を」ということだろう。特に顧客管理の領域においてはIT基盤の再構築によって、ビジネスプロセスの変革や意思決定の迅速化、すなわち「リアルタイム性」が強く求められている。顧客のニーズは目まぐるしく変わるし、すぐさま対応できなければ競合他社に機会を譲るだけ。顧客は待ってくれないからだ。

 かつてリアルタイムといえば、トランザクションをいかに即時処理するかだった。モノやカネの流れをしっかりと把握するERPの導入などによって一定の成果を得た企業だが、意思決定の迅速化によって次の一手をいかに素早く打てるかがその盛衰を分けるようになっている。リアルタイムエンタープライズの実現は、最新の情報をいかに早く意思決定者に伝えることができるかにかかってくると言っていい。

 そのため、多くの企業がERPによって蓄積されたトランザクションデータを切り出してデータウェアハウス(DWH)を構築するアプローチを模索したが、2つのシステムが存在することでリアルタイム性の追求は難しいものとなってしまう。しかし、オラクルは、自慢のOracleデータベースによってこの「データの統合」という第一関門をクリアする。DWH機能を盛り込むことによって、トランザクションとDWHという2つのニーズを満たせるからだ。

データでビジネスプロセスをつなぐ

 ただ、ERPが万能とは限らなかった。いちからやり直すビッグバン型ならいざ知らず、既に企業には既存のシステムがある。また、コアコンピタンスをERPに合わせて標準化することはできないため、ERP導入企業の大半はその部分をカスタマイズせざるを得ない。

 こうした企業の実情に照らし、オラクルは新しいOracle E-Business Suite 11i.10でインテグレーション機能の強化という手を打ってきた。「もっとインテグレーションを簡単にしたい」「他社のアプリケーションやカスタムなレガシーアプリケーションを捨てられない」という顧客らの声を反映したものといえる。

 何百ものWebサービスを利用してほかのアプリケーションと連携できるほか、800以上のBusiness Event(あるイベントをトリガーにしてビジネスロジックが実行され、例えば、Webサービスでほかのアプリと連携できる仕組み)が組み込まれる。これにより、企業はあまりモジュールを意識することなく、必要とされるビジネスプロセスを定義し、サービスを組み合わせることによって柔軟で迅速なシステム構築や変更が可能となる。いわゆるSOA(サービス指向アーキテクチャ)の実現だ。

 さらに同社は「第3の道」まで用意する。「Oracle Customer Data Hub」だ。Oracle E-Business Suiteを導入しなくとも、情報の分断化を解消し、顧客に関する情報を1カ所に集約し、迅速で適切な意思決定に役立てることができるという。

 「Oracle E-Business Suiteの全面採用」「E-Business Suiteと他社アプリやレガシーとの統合」、そして「Oracle Customer Data Hubの導入」という一連のアプローチに共通するのは、「データやビジネスプロセスの統合」による経営のリアルタイム化だ。いずれの方法によっても、「ビジネスプロセスとビジネスプロセスをつなぐグール(糊)として単一のデータモデルが機能してくれる」と吉田は話す。

 企業にとっても最も価値のある情報を核として、柔軟にビジネスプロセスを定義できる「Oracle Information Architecture」はライバルたちにはない大きな強みと言っていい。

 なお、日本オラクルでは、Oracle E-Business Suite 11i.10の正式発表に先立ち、9月14日の「Oracle Procurement」を皮切りに、「Oracle CRM」「Oracle Internal Controls Manager」「Oralce Daily Business Intelligence」「Oracle Warehouse Management System」、そして「Oracle Human Resources Management Systems」という一連のモジュールの最新版を先行して発表している。

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