RFIDにおける使用帯域の本命は?月刊コンピュートピア(2/2 ページ)

» 2004年10月25日 22時57分 公開
[梅田正隆,月刊コンピュートピア]
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 このうち、パート5は委員会ドラフトの段階で規格化の中止(withdrawn)が決まった。パート5は、主にITS(高度道路交通システム)向けに提案されたものだが、実は通信方式が日本で許可された方式と異なるため使用できない恐れがあった。おそらく日本は委員会で反対票を投じたはずだ。

 日本にとって頭痛のタネは、UHF帯のパート6とパート7だった。すでに国内では860-930MHzの帯域が携帯電話用途に、430-440MHzがアマチュア無線用途に割り当てられており、現在の電波法上、使用不可能だったからだ。

 電波は、ITU(国際電気通信連合)によって無線通信規則などが決まる。この決定に基づき国内での周波数の分配を総務省で決定される。総務省ではRFID用途にパート2-4は確保していたが、UHF帯の標準化は想定していなかった。UHF帯を強く推したのは米国だった。テロ対策を強化するため、米国は国内に入ってくるコンテナ管理にUHF帯のエアインタフェースの採用を決定してしまったのだ。

 コンテナの開閉履歴を記録できるRFIDだ。パート6-7は、パート4の2.45GHz帯よりも波長が長く、障害物を回り込みやすくなるため読み取り性能が高いのが採用した理由だ。通信距離は7メートル以下。これに対応できない日本は、米国への輸出が滞る可能性があった。

 パート7の433MHzは、日本以外のほとんどの国で割当て可能だが、日本だけが使用できず蚊帳の外となったままだ。433MHz帯域は、RFIDとアマチュア無線とが相互に干渉し合い、その影響はかなり大きい。周波数の共有はまず不可能で、RFIDを用いるには電波を遮蔽した室内で使用するしかない。今後アマチュア無線とどう折り合いをつけるのか、政治的な判断が必要となるだろう。

 一方、パート6の860M-930MHzへの対応については、950MHz近傍の帯域を使用できないか検討されてきた。950MHz近辺の帯域は、携帯電話事業者に割当てていたが、業界再編で空きが出来ていた。日本はパート6の帯域を960MHzまで拡げるようISO/IECに提案した。

 2004年4月現在、ISO/ICEは公式ホームページでパート6を「ParametersforAirInterfaceCommunicationsatUHF」と表記し、このパートだけ周波数表記から「UHF」に書き換えている。帯域は300M-1000MHzとなった。ただ、帯域幅が広すぎて標準化の意味が薄れてしまったようだ。対応するICタグメーカーはコストダウンに苦戦するかもしれない。

 このままいけば、RFIDの使用帯域の本命は、パッシブICタグの場合、やはり米国が主導するUHF帯(915MHz帯)だ。アクティブICタグでは、パート4の2.45GHzだろう。また、他の無線方式との干渉が小さく、低消費電力で高速な無線システムである7.5GHz帯(3.1G-10.6GHz)のUWB(ウルトラワイドバンド、通信距離は約10m)も有望になってきた。

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