ビジネスIM市場を塗り替える? MSの「LCS 2005」出荷へ

米Microsoftは先日、「Live Communications Server 2005」を発表した。同社のような大手が各種フリーIMクライアントとの互換性を強化することは大きな意味がある。

» 2004年10月29日 20時14分 公開
[IDG Japan]
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 12月にリリースされる米Microsoftの「Live Communications Server(LCS)2005」では、人気の高いインスタントメッセージング(IM)ソフトとの互換性が強化される。この新製品は、企業向けIMのユーザーやベンダーに、職場での安全なメッセージングがもたらす新しい可能性に注目させる効果を持つ。

 LCS 2005では、特別な接続パックを使うことで、Yahoo! Messenger、AOL Instant Messenger(AIM)、MicrosoftのMSN Messengerという3大フリーIMソフトのユーザーと、安全な会話ができるようになる。LCS 2005で送られるメッセージは、暗号化されてセキュアなため、ビジネスユーザーが3大フリーIMクライアントのユーザーと、より安全に通信できると、Microsoftのサーバマーケティング担当ディレクター、テーラー・コリヤー氏は語る。

 企業向けのセキュアなIMが重要になってきているのは、「IM経由で企業秘密が漏れては困るからだ」と同氏。

 Financial Services Instant Messaging Association(FIMA)の会長でDeutsche BankのIMプログラムマネージャー、グラハム・ロウラー氏は、LCS 2005が約束する新たな互換性は、「とりわけMicrosoftのような会社が提供することで、非常に本質的かつ大きな変化を業界にもたらす」と言う。

 同氏は、フリーのIMクライアントより安全性と使い勝手を高めた「企業向けIMの豊かさ」が、フリーIMコミュニティの大勢のユーザーとの融合を可能にすると説明する。「理論上、二つの世界の良い部分を合体できるともいえる」

 Deutsche Bankでは、セキュアな企業向けIMをビジネスに多用している。

 FIMAはベンダーに対し、IMソフトの互換性、安全性など、ビジネスITに求められる機能の標準化を要求する目的で、2002年に設立された団体。加盟企業は、Bank of America、Citigroup、Credit Suisse First Boston、Deutsche Bank、J.P. Morgan Chase、Lehman Brothers Holdings、Merrill Lynch、Prudential Securities、UBS Warburgなど。

 一部のFIMA加盟企業はLCS 2005のβテストに参加しており、そのほとんどが、少なくともこの製品の導入を検討しているという。

 「この5年間で、(IMは)特に営業や貿易関係のビジネスに欠かせない技術となってきた」とロウラー氏は言う。

 バージニア州リッチモンドを本拠とする新聞とテレビのコングロマリット、Media Generalでサポートサービス担当ディレクターを勤めるマイク・ミラー氏によれば、Media Generalでは、IT部門のお墨付きを得た企業向けIMシステムを使っているのは8000人の従業員のうちわずか100人程度とまだ少ない。それらのIMユーザーはフリーのAIMを使っているが、IMlogicのソフト「IM Manager」で、セキュリティ、メッセージ記録、管理・コントロールの機能が追加されている。

 ミラー氏も企業向けIMシステムの導入を検討はしているが、現状はユーザー数が少ないことから、Media Generalではまだ、もっと高機能で高価なシステムを必要としていないという。「もっとIMのユーザーが多ければ、もう少し真剣に(企業向けIMを)検討するだろう」と同氏。

 Radicati Groupのアナリスト、ジェネル・ハン氏によれば、企業向けIMが注目を集めている理由として、セキュリティやメッセージ記録などの機能ばかりでなく、IMが提供する「在籍確認」機能への関心の高さもあるという。IMの技術を使えば、誰が在席中か、すぐに分かるからだ。

 「企業向けIMでは、この機能が確実に重視される」とハン氏。「あらゆる企業が、(フリーの)IMではビジネスに不十分だということを理解しつつある。だが、フル機能の企業向けIMシステムの導入準備がまだできておらず、フリーのIMクライアントを、IMlogicやAkonix Systems、FaceTime Communicationsといったベンダーの管理ツールと組み合わせて使っている企業もある」と言う。

 Jupiter Researchのアナリスト、ジョー・ウィルコックス氏は、規制によってメッセージ記録保管が強く求められるようになったことや、公衆IMネットワークがもともと企業にとっては安全といえないことへの懸念からも、企業向けIMへの関心が高まっている。

 企業向けIMは「必需品になろうとしている」とウィルコックス氏。「一部の小売業者にとっては、重宝はしても必需品とまではいえないだろう。しかし、社員が着席していることが多い会社で、しかもたくさんのフロアや別の町にいる同僚とやり取りする必要のある会社ならば、企業向けIMの必要性は劇的に高まる」

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