海の向こうのCitrix iForum 2004ではアクセスインフラストラクチャに関する新たなメッセージが飛び出したが、シトリックス・システムズ・ジャパンの樋渡マーケティング本部長は、「先ずはアクセス戦略の必要性から再度啓蒙していきたい」と話す。
「もう一度、アクセスストラテジーを啓蒙する努力をしたい」── そう話すのはシトリックス・システムズ・ジャパンでマーケティング本部長を務める樋渡純一氏。10月初め、フロリダ州オーランドの「Citrix iForum 2004」でアクセスインフラストラクチャの核となる8つの機能について概略を説明したCitrix Systemsだが、日本市場ではユーザーの実情を踏まえ、アクセス戦略立案の重要性を訴えながら製品やソリューションの導入を図っていく。
「日本企業では、リスクヘッジをしながら、新しいITを取り入れていくのが一般的だ。アクセスインフラの必然性がまだ彼らに理解されていない」(樋渡氏)
欧米のユーザーは最先端の技術を武器に競争力を高めようという意識が極めて高い。ITでもリスクを積極的に取り、大きなリターンを狙う。経営指標にITがきちんと組み込まれているからだと樋渡氏は話す。
Citrixは2003年3月、アクセスインフラストラクチャ構想をぶち上げ、その後のiForum 2003では単なる「サーバベーストコンピューティング」のベンダーから「アクセスインフラストラクチャ」のベンダーへの脱皮を宣言していた。今年5月には日本市場でも「Citrix MetaFrame Access Suite」を発表し、企業に対してセキュアで柔軟なアクセス戦略を立案するよう訴えてきた。
今年のiForum 2004で概略が説明されたアクセスインフラストラクチャの8つの機能は以下のとおりだ。
米国市場ではiForum 2004を機に、8つのメッセージが打ち出され、例えば、そのうちの一つである「SmartAccess」を実現する製品も近く登場してくることが予想される。しかし、日本市場では依然として「MetaFrame」ベンダー、サーバベーストコンピューティングベンダーの印象が根強い。確かにNotesなどと組み合わせ、モバイルでの使い勝手を飛躍的に改善している先進ユーザーも多いが、それは裏を返せば、使われ方が限定的ということ。アプリケーションや情報へのアクセスをセキュアかつ効率化する全社的なインフラストラクチャとして構築されていないのだ。
樋渡氏は、「新しいメッセージをそのまま持ち込んでも、ユーザーらを混乱させてしまう恐れがある」とし、セミナーやMetaFrame Access Suiteの販促キャンペーンを展開しながら、タイミングを計りたい考えだ。
アクセス戦略には、ITがサービスだということが根幹にある。企業が社員やパートナー、さらには顧客らにより良いサービス、セキュアで柔軟なサービスを提供するには、どうしたらいいかということだ。
フロリダ州の金融サービス会社、Mutual Service Corporationは、全米に3200の事業所を展開しており、アプリケーション配布が課題だったが、MetaFrame Access Suiteで解決した。これだけでも素晴らしい事例といえるが、同社はこの夏、さらに大きなメリットをボーナスとして受け取った。日本と同様、今年は多くのハリケーンがフロリダを襲い、被害も甚大だったことはご存じだろう。しかし、同社はMetaFrame Access Suiteの環境全体をジョージア州アトランタにミラーリングすることで、3200の事業所は普段と変わらずビジネスを継続できたという。仮にITシステムが1週間ダウンすれば、260万ドルの損害を被ったと彼らは試算する。これこそがアクセス戦略の必要性といえる。
「サービスとしてアプリケーションや情報を配布する戦略は日本の企業にとっても必須となるはずだ」と樋渡氏は話す。
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