「検閲を許すな」――住基ネットのプレゼン中止問題訴訟で原告意見陳述

住基ネット侵入実験に関する発表が総務省の要請で中止を余儀なくされ、言論の自由を侵害されたとし、セキュリティ専門家のイジョビ・ヌーワーさんが国を相手取って起こしていた損害賠償訴訟の原告意見陳述が行われた。

» 2005年01月25日 16時39分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 情報セキュリティイベント「PacSec.JP/core04」で予定していた住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)侵入実験に関する発表が総務省の要請で中止を余儀なくされ、言論の自由を侵害され精神的苦痛を受けたとして、セキュリティ専門家のイジョビ・ヌーワーさんが国を相手取って起こしていた損害賠償訴訟の原告意見陳述が1月25日、東京地裁(近藤壽邦裁判長)で行われた。ヌーワーさんは「総務省は最も典型的な検閲を行った。裁判所に不正をただしてほしい」と述べた。

 訴状によると、総務省は、同イベント用にヌーワーさんが作成したプレゼン資料の一部を公表しないよう、主催者を通じて要求。ヌーワーさんはプレゼン中止を余儀なくされた、と主張している。

 法廷でヌーワーさんは「政府は私と直接対話することなく、日本側主催者を脅し、日本側主催者は私を脅してプレゼンをやめさせた。これは典型的な検閲で、民主主義国家として許されることではない。法廷が不正を正してくれることを望む」と述べた。

 さらに「総務省は言論の自由に短剣を突き刺した。『殺すほど深くは傷つけていない』と主張するかもしれないが、出血が死に至る前にたださねばならない」などと訴訟の重要性を訴えた。

 訴状によるとヌーワーさんは、昨年11月11−12日にかけて都内で開かれたPacSecで、実験で得た内容について公開する予定だった。これに対し総務省は、スライド用プレゼン資料の一部について公表しないよう、主催者のエス・アイ・ディーシー(SIDC)を通じて要求。ヌーワーさんは、発表を強行するとセミナーの運営に迷惑をかけると考え、発表を断念したとしている。

 このためヌーワーさんは、憲法第21条が保障する表現の自由を侵害され、セキュリティ専門家としての誇りを傷つけられるなどし、精神的苦痛をこうむったとして、国家賠償法に基づき損害賠償3000万円の支払いを求め、11月に提訴した。

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