Gartner、「顧客サービスの外部委託は80%が失敗する」

顧客の視点に立たずにコールセンターなどの顧客サービスをアウトソーシングすると、コスト削減を達成できないばかりか顧客離れを起こすとGartnerは指摘している。(IDG)

» 2005年03月07日 10時45分 公開
[IDG Japan]
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 コストを削減する目的で顧客サービス業務をアウトソーシングする企業は、顧客をも失う可能性がある――調査会社Gartnerは3月4日、このような見解を示した。

 同社の予測によると、2007年まで、コスト削減のために顧客サービス業務をアウトソーシングする企業の約80%は失敗する。その理由として、アウトソーシングセンターにおける離職率が最高80%と高いケースが多いこと、また多くの企業はアウトソースした業務の管理を軽視する傾向にあることをGartnerは挙げている。

 「企業は(顧客サービス)業務を顧客の視点からとらえておらず、このことはリスクを伴う」とGartnerの調査担当ディレクター、アレクサ・ボナ氏は指摘する。

 人事や経理など社内業務をアウトソーシングする場合は、問題が発生しても社員が対処するため顧客サービスほど問題が表面化しないという。

 さらに同氏は、コールセンターサービスや技術サポートなど顧客と直接接する業務では、顧客離れを防ぐための特殊なトレーニング・管理が必要だと言い添えた。

 Gartnerの予測では、2008年までに、顧客と接する業務をアウトソーシングしている企業の約60%で、顧客離れや、可能なコスト削減額を上回る“隠れたコスト”が発生するという。また実際にコストが削減されるかどうかは保証されないとボナ氏は言う。Gartnerの調査で、企業が顧客サービス業務のアウトソーシングに支払っている費用は、同じ業務を社内で処理しているグローバル企業上位15%のコストよりも30%多いことが明らかになっている。

 それでも顧客サービスのアウトソーシング市場は今後も伸び続け、2004年の84億ドルから2007年は122億ドルへ拡大するとGartnerは予測している。もっともアウトソーシング市場全体に顧客サービス業務が占める割合は依然低く、今年は2%未満、2007年でも5%を割る見通しとなっている。

 ボナ氏は、企業はアウトソーシング先を賢明に選択するべきだとし、特に現在インドのアウトソーシング市場で整理統合の動きが起きていることを理由に挙げた。この地域の成長は著しく、米国の大手アウトソーシング企業が買収の機会をうかがっている。Gartnerは、コールセンターサービスを手がけるインドの新興企業の上位15社の70%が年末までに買収されたり、あるいは市場から取り残されると予測している。

 「このような急成長を遂げるとプロセスの崩壊が起きる」とボナ氏。インドのアウトソーシング新興企業における離職率は55%と高く、依頼企業はより安定したアウトソーシング企業を探すべきだとボナ氏は勧めている。

 Gartnerによれば、主要な顧客サービスのアウトソーシングには高いリスクが伴う一方、非主要業務のアウトソーシングは25%〜30%のコスト削減を達成できる。

 アウトソーシングを成功させるためには、顧客サービス業務のプロセスを隅から隅まで把握し、プロジェクトを十分に管理することだとGartnerは話している。このほか、サービスレベルと報酬を連動させる革新的な契約を考案することを企業に提案している。

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