Intelチップセットを搭載し、いったんネットワークに接続するとほかのシステムからも認識されるRFIDデバイスを開発する――SAP幹部がIntelとの提携の狙いを語った。(IDG)
独SAPと米Intelは、製造、物流、小売セクターでのプラグ&プレイRFIDに道を開く可能性を持つ技術の開発で協力することに合意した(3月11日の記事参照)。両社は3月16日に閉幕したCeBITでこの提携を発表した。
CeBITのSAPの広いブースで、IDG News Serviceは同社サプライチェーン管理およびRFIDシステム技術担当ディレクター、クリストフ・レスモールマン氏に話を聞いた。同氏はRFIDハードにさらなるインテリジェンスを与え、サプライチェーンのほかのシステムとのデータの流れを円滑にするインタフェースを確立するというSAPの目標について語った。
―― RFID標準に関する状況は?
レスモールマン氏 EPCglobalと国際標準化機構(ISO)がこれまでに発行した標準は、RFIDに投資する企業にとっては最低限のものです。例えばEPCglobalは複数の標準を発行しました。ほとんどは最近のGeneration 2の標準です。この仕様は、読み取り機とタグの間のインタフェースと、タグに書き込まれる情報などに関するものです。ほかの標準は策定中です。
ですが、RFID市場は今、多くのベンダーが異なるデバイスを多数提供しているという状況です。その結果、企業は同じサプライヤーからすべてのRFID機器を買わないと、複数の別々のシステムを監視し、異なる種類のデバイスのファームウェアをアップグレードしなくてはなりません。
―― Proctor & Gamble、Wal-Mart Storesのような国際的な製造・小売業者はグローバルなRFID標準を望むでしょう。全世界に通用する一連のRFID標準と、今の携帯電話業界のように互いに競合するRFID標準、どちらが予想されるでしょうか?
レスモールマン氏 すべてのデバイスの相互運用性を保証する真のグローバルRFID標準の確立には明らかに関心が集まっています。ですが周波数など、地域的な違いもあります。例えば米国で採用されているRFID周波数は欧州やアジアでは使えません。既に携帯電話用に使われているからです。欧州には放射線規制などほかにも規制があります。これらの地域的な違いに対応できるようデバイスを設計しなくてはなりません。ところで、中国はRFID分野で独自の技術を開発することを検討しています。
―― Intelとともに達成しようとしているのはどんな計画ですか?
レスモールマン氏 われわれはIntelとともに、RFIDハードと業務プロセスにおけるRFIDの利用に関するコモディティ化のプロセスを開始するつもりです。今のRFID読み取り機は、多くの異なる部品を含んでいます。Intelは、送受信機に不可欠な部品、それからアナログ・周波数の部品も含むチップセットを提供する計画です。このチップセットには、キャプチャしたRFIDデータを、そのデータを使うさまざまなシステムに適切なフォーマットで送信するインテリジェンスを組み込みます。
―― この提携におけるSAPの役割は?
レスモールマン氏 われわれは協力してインタフェース、ハンドシェイクプロセスに取り組んでいます。
―― それについて説明してください。
レスモールマン氏 その目的は、Intelチップセットを搭載し、インテリジェンスを組み込んだRFIDデバイス、つまり読み取り機を開発することにあります。このデバイスは独自のネットワーク管理機能を持ちます。言い換えれば、独自のIPアドレスを持つということです。読み取り機をいったんネットワークに接続すると、そのネットワークを利用するほかのシステムからも認識されるようになります。ハンドシェイクプロセスはデバイスに対し「データを送りたいのなら、次のXMLフォーマットかほかの指定フォーマットで送りなさい」と指示するよう定義されています。
われわれがIntelとともに達成しようとしているのは、RFIDを日常的に使う人々が、非常に簡単に使えるようにすることです。例えば倉庫のスタッフ全員が、基盤技術をいじらずとも、デバイスをネットワークに接続するだけで準備が整うようにしたいのです。
―― 具体的にどのようなアプリケーションを提供しているのですか?
レスモールマン氏 RFIDプロセス全体で大きな役割を演じる重要なアプリケーションは「SAP Event Management」です。このアプリケーションは、製造業者から物流センター、小売業者まで、サプライチェーンに沿ってすべてのスキャン(イベント)を追跡します。しかし追跡するだけではありません。例えば、ある場所が割り当てられたタイムウィンドウを超えると、このアプリケーションはその状況を検知して、購入者などのプランニングシステムにメッセージを送ることで対策を開始します。
――ほかの重要なアプリケーションは?
レスモールマン氏 「Auto-ID Infrastructure」です。これは個々の読み取りを調べて、データを業務の文脈に取り入れる技術コンポーネントです。例えば、製造業者が小売業者に詳細な出荷通知を送ります。Auto-ID Infrastructureは、この通知を読み取り機に近いレベルに持ってきます。
―― ほかにもSAPが提供する重要なアプリケーションはありますか?
レスモールマン氏 ビジネスパートナー間でのRFIDデータのやりとりは重要です。複数のパートナーが関わることが多く、しかも皆が別々の方向から来ています。われわれはこの情報交換を円滑にするアプリケーションを提供しています。「Exchange Infrastructure」と呼ばれるもので、SAP NetWeaverプラットフォームに統合されています。
―― RFIDはNetWeaverに不可欠な部分なのですか?
レスモールマン氏 そうです。われわれはNetWeaverにおいて出荷、受領、通知の送付など重要なプロセスに標準でRFIDを統合しています。
―― RFIDの広範な導入を阻んでいるものは何でしょうか?
レスモールマン氏 この技術を大々的に推進しているWal-Martは、RFIDデバイスとタグがまだ高額だからだと結論づけています。
―― 近い将来価格が下がったとして、企業はRFIDを既存のバーコードでは不可能などんな用途に使うでしょうか?
レスモールマン氏 リアルタイムの認識です。サプライチェーン管理者は何十年もの間、製造と物流の情報の流れをリアルタイムで追跡することを夢見てきました。RFIDならそれが可能です。
―― RFIDのパズルにまだ欠けているピースは?
レスモールマン氏 RFIDタグを最初から最後まで――中国の工場からノースダコタの店舗まで――商品に付けたままにすることです。バーコードではこれはできませんでした。Wal-Martの店舗に積まれている荷運び台には、複数のラベルが重ねて貼られています。RFIDを使えば、企業そして国をまたいで機能できる技術を導入する機会が得られるのです。
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