Solaris 10はLinux攻勢の切り札となるか――後編(2/2 ページ)

» 2005年03月23日 15時13分 公開
[渡辺裕一,ITmedia]
前のページへ 1|2       

 データベースに蓄積された情報漏えいが問題視されているが、クラスタ内に格納された情報は強固なセキュリティによって保護されている。仮に多くのサービスを1台のSolaris 10で運用したとしても、外部に公開するサービス(Web、FTP、SMTPなど)と、機密情報を格納したコンテナは独立構造を持つ。任意のコンテナでセキュリティホールを突かれたとしても、そのコンテナから機密情報を保護するコンテナに進入することはできない仕組みだ。

 現実的なシステム構成では、外部向けのサーバと内部サーバは切り分け、その間にファイアウォールを設けるだろうが、Solaris 10では1台での運用でもコンテナ間のデータセキュリティにより、同等のことを可能としている。

 データシートの中で、Solaris 10は「パフォーマンスの向上はまずハードウェアからという発想をするが、Solaris 10であればシステム構成の変更をせずに運用が可能だ」とうたう。ミッションクリティカルなシステムには必ずしもそうは言えないが、ミドルレンジのシステムであれば確かにSolaris 10だけでも賄うことができるだろう。

DTraceによるリアルタイムなトラブル監視

 DTrace(Dynamic Tracing)はSolaris 10にとってひとつの大きな特長となっている。ただ、これは専ら開発者と管理者向けの機能だ。

 端的に言えば、OS上で稼働しているプロセスのうち、どれが負荷がかかっていて、どのように解決すればよいかを自動的に判断する。ただし、その判断や監視システムはスクリプトを構築する必要もある。

 例えばコンパイル中のデバッギングがスタックしたりエラーを出力し続けて急速に負荷がかかりはじめたような場合、それを検出してレポートとしてリアルタイムに出力する。WindowsのタスクマネージャやtopコマンドのようにCPU負荷率全体ではなく、特定のキーワードや変数、カーネル内部の動作を監視する機能だ。「プロバイダ」、「プローブ」、「コンシューマ」の三要素で構成され、どのリソースのどの部分に負荷がかかっているかを検出する。そのポイントは約30000項目に及ぶ。

 そのため、システムモニタ系のGUI画面で表示されるのではなく、あらかじめ監視領域をPerlのようなスクリプトを作成する必要があるわけだ。サンはこれを「D言語」と呼んでいる。そして結果出力はターミナル画面でコマンドと引数を入力して表示させる。

 DTraceはSolaris9以前から搭載されてきた機能だが、Solaris 10はこれを更に拡張した。監視モニタであることから、動作パフォーマンスにもオーバーヘッドが生じるが、ターミナルから複数のスクリプトのオン、オフを自在に使い分けることもできる。開発者にとってはソースデバッギング時の問題解析、管理者にとってはパフォーマンスチューニングを行うための強力なツールとなっている。

 従来のtopコマンドのような大まかなシステムパフォーマンスだけなら、Solarisの管理ツールからGUIで把握することができる。

画面■例えばtopコマンドは、日本語でGUI画面として表示される

ユーザーを介さずに自動修復するセルフヒーリング

 Linuxでは、あるプロセスが停止した場合に管理者はその事実を調べてから再起動などの対処をするだろう。身近によくあるのは、Webサーバにおけるデータオーバーフローだ。それは時に、ストレージなどデバイスの破壊へと結びついてしまう。自己ハードウェアの問題だけではないのだ。銀行、証券、損保等の金融機関では、わずかな時間で巨額な金額が動く。そのような現場では絶対にダウンタイム許容が数ミリ秒以内というケースも多い。

 もちろん、それらミッションクリティカルなシステムには常時管理者が監視を行うべきだが、Solaris 10はプロセスやサービスのトラブルを管理者よりも先に自動検知する仕組みを取り入れた。そして問題のあるプロセスのリカバリーを自動的に行う。これがセルフヒーリングだ。

 セルフヒーリングはハードウェア、システムフォルト、サービスをそれぞれ監視し、システムダウンが発生しそうな時間を予測する。そして、その前に必要な手当を自動的に行う。熟練した管理者はシステムダウンを察知したらすぐに復旧作業を行うが、Solaris 10のセルフヒーリングはシステムをダウンさせずに復旧するというのが大きな強みになっている。

トップエンドの機能をエッジにも

 これまで挙げてきた機能は、主としてOSのバックグラウンドで働く機能である。

 しかし、コンソール画面を表示させた時、または、Solaris独自のコマンドをや管理ツールを見た場合には、Linuxとはまったく異なるトップエンドOSの片鱗を感じさせる。具体的には、Solaris 10はUnixのコマンドとスクリプトをフルに駆使してこそ、その機能が活かせるOSだということだ。

 前編でも述べた通り、Java Desktop Systemの「顔」はある意味でかりそめの姿だ。このGUI環境は、WebブラウズやStar Suite、あるいは開発環境を容易に扱うためのユーザビリティとして備えられている。そしてLinuxユーザーに、違和感のない操作性を与える。従来のLinuxアプリケーションがネイティブに動作させられることも大きなポイントだろう。しかし、いちど内部に潜り込めば、その懐はあまりに深く、標準での完成度を見せつける。

 Linuxがbashシェル標準であることから、比較的古いとされるbsh、cshを標準設定している点は違和感があるかもしれない。しかし、Solaris 10を入手したら、まずはコンソールを開いてほしい。そこからSolaris 10の本当の凄さが分かるはずだ。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ