サーバ統合の切り札「仮想化」でタッグを組むデルとヴイエムウェア(2/2 ページ)

» 2005年04月15日 00時00分 公開
[ITmedia]
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 「VMwareによって資源は60%から80%まで活用できる。経験則からだいたい“1CPUで5台”は統合できるし、最新のハードウェアで性能が高まれば、さらに統合できる台数は増える」と話すのは、ヴイエムウェアでエンドユーザーを担当する根本尚志マネジャー。 IAサーバといえども、きちんと管理することの重要性が認識されるようになった背景には、個人情報保護法の施行もあるし、何よりIAサーバが企業にとって重要なアプリケーションを担うまでになったことがある。

「サーバとストレージで勝負するデルとは組みやすい」と根本氏

 ヴイエムウェアでは、VMwareによるハードウェア資源の仮想化によって、「本番サーバの統合」や「ビジネス継続性の向上」、あるいは「ソフトウェア開発サイクルの合理化」といったIT業界が抱える複雑な課題を解決できるとしている。

 サーバ統合は別としても、ハードウェア資源の仮想化がビジネスの継続性と、にわかに結びつかない読者が多いかもしれない。しかし、仮想化は「物理的なマシン」と「論理的なマシン」を切り離すことが本質的な考え方。VMwareの場合、仮想マシンはファイルとして記述され、それをコピーすることによって移動が自由に行えるのだ。

IAサーバも止められないシステムに

 昨年はさまざまな災害が日本列島を襲ったが、これもIAサーバの管理に拍車をかけたという。例えば、コールセンターが企業の顔として機能し始めているが、そのフロントエンドシステムの多くはIAサーバとクライアントPCで構築されているからだ。

 「保険会社は災害時にこそ問い合わせが殺到する。サービスを継続できなければ、顧客の信頼を失ってしまう」と話すのは、ヴイエムウェアの根本氏。

 こうしたコールセンターの大半はマルチベンダー環境で構築されている。このため、物理的にバックアップサイトを構築しようとすると、そちらも1社では済まない。しかし、CPU、メモリ、ネットワークインタフェースカード、およびHDDといったハードウェアインフラストラクチャーをVMwareによって仮想化してやれば、バックアップサイトはシングルベンダーで、しかも、より少ない台数のIAサーバで構築できるようになる。「待機系サーバのサーバ統合」と呼べるものだ。

止めずにメンテナンス

 ビジネスの継続性には、災害対策もあれば、部品交換やパッチ適用といった計画停止もある。むしろ、システムを止めなければならない理由の大半は後者だといっていい。別のハードウェア資源上に仮想マシンを移動させ、部品交換やパッチ適用を行えば、計画停止は最小化できるし、VMwareではユーザーセッションを中断せずに仮想マシンを移動できる「VMotion」技術も提供している。

 また、構築や設定の厄介なサーバ環境も、仮想マシンとしてテンプレート化しておけば、それをコピーすることで秒単位のプロビジョニングが可能となる。もちろん、VMware WorkstationがクライアントPCに導入されていれば、複雑な環境の迅速な配布メディアとしても機能するわけだ。

 「当初はインフラ部門がコストメリットやサービス水準の改善などを期待して導入を決めてくれるが、あとから喜んでもらえるのは運用部門」と根本氏は明かす。

AIGではサーバ台数を20分の1に

 こうした「仮想インフラストラクチャー」のメリットを最大限に享受する企業の代表例としてVMwareが挙げるのがAIG Group傘下のシステム子会社、AIG Technologyだ。さまざまな金融サービスをグローバルに展開する同グループには、日本でも良く知られているAIU、アメリカンホーム、アリコジャパンといった保険会社などが名を連ねる。

 AIG Technologyでは、新規プロジェクトのためのデータセンタースペースを確保することと、サーバを構築してサービスを提供するまでの期間短縮が課題となっていたが、VMwareによってサーバ台数を20分の1に統合、サーバ構築にかかる労力も半減できたという。

 ここまでサーバの統合が容易になると、Dellにとってはかえって不都合ではと心配になってくるが、デルの布谷氏は「コンピューティングは、ストレージ(データ)を中心とし、これにサーバなどが部品としてつながる形へと移行する。サーバは良い意味で“ハコ”として使えるようになる」と話す。同社では、「スケーラブル・エンタープライズ戦略」を掲げ、コモディティーとなった2ウェイ、4ウェイのIAサーバを組み合わせて効率の良いシステム構築を図るアプローチを顧客に奨める。ビジネスの成長に応じて柔軟にシステムを拡張できるため、TCOを削減でき、また高いROIも実現できるからだ。

 「VMwareの戦略とわれわれのそれは一致している。今後は、VMwareによる仮想化のニーズが一層高まるのに備え、さまざまな用途における技術的な検証を進めたい」と布谷氏は話す。

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