日立がショールームをリニューアル、行政サービスのワンストップ化に向けた課題とは

日立製作所は、政府や自治体関係者向けに電子政府/電子行政関連のソリューションを紹介する「CyberGoverment Square」の展示内容をリニューアルした。

» 2005年05月27日 19時41分 公開
[高橋睦美,ITmedia]

 日立製作所は5月30日より、政府や自治体関係者向けに電子政府/電子行政関連のソリューションを紹介する「CyberGoverment Square」の展示内容をリニューアルし、公開を開始する。

 このショールームは、政府が進める「e-Japan戦略」「e-Japan戦略II」を踏まえ、電子行政の実現に向けたソリューションを紹介するためのスペース。2000年3月のオープン以来、都道府県や市町村の首長も含め、約6000団体、1万8000人以上が来場した。

 ショールームには常時30個程度のコンテンツが用意され、定期的に入れ替えが行われているが、今回のリニューアルは「実現したくなる未来を魅せる」をテーマにした。特に「ITの利活用を支えるセキュリティに力を入れている」(同社情報・通信グループ公共システム営業統括本部副統括本部長の津田義孝氏)という。

 ショールーム内では、静脈認証を用いた入退室管理システムや静脈、顔認証など複数のバイオメトリクス認証を組み合わせた認証システムのほか、e-文書法対応をにらみ、ヒステリシス署名を活用した電子文書の原本性保証といったコンテンツが展示される。また、同社が5月23日に発表したばかりの「セキュアクライアントソリューション」を用いた情報漏えい対策の仕組みも用意された。

静脈ATM 静脈認証を組み込んだATM装置が報道向けに特別に展示された

 さらに、戸籍謄本/抄本を電子化して交付、請求するための仕組みとして「戸籍手続きオンライン」のデモンストレーションも用意されている。

 法務省では2004年4月に省令を改正し、オンラインシステムを通じた電子戸籍証明書の交付/請求や戸籍の届出を可能にしている。日立の説明によれば、多くの自治体で電子申請が可能になっているものの、中には戸籍謄本/抄本などの添付が必要な手続きも多く、結局は窓口に出向き、紙の文書を受け取るといった流れになることも多い。

 しかし、戸籍手続きをオンライン化すれば「電子申請の際にデータを添付するだけで済み、各種手続きのワンストップ化が実現できる」(同公共システム営業統括本部公共ビジネス企画本部カスタマ・リレーションズセンタの泉菜穂子氏)。懸念されるセキュリティ面は公的個人認証サービスに基づく認証や電子署名の付与、SSLによる暗号化によってカバーするという。

 残念ながら、オンラインの戸籍手続きはまだ実現されていない。そもそも「文書そのものの電子化がまだまだ遅れている」(同公共システム事業部全国公表システム本部電子自治体ソリューション統括部部長の甲斐隆嗣氏)とも言う。

 政府および自治体における電子行政化が進展するには、鶏と卵の関係だが、「戸籍や印鑑証明などの電子交付が可能になり、サービスのワンストップ化が進んで利便性が高まっていくことが必要だろう。また、Web上での使い勝手も改善していく必要がある」(甲斐氏)。

 さらに、地方財政の悪化もハードルの1つだ。ランニングコストまで含めばコスト削減につながることは見えているものの、初期投資の段階で二の足を踏むケースもあるという。また、行政サービスの電子化を進めていく上では、行政組織やそのワークフローを変更する必要も生じる。このため、技術的な問題の解決だけでなく、法制度も含め、組織や人的な側面からの検討も必要という。

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