ではここで、世界の携帯電話キャリアが無線LAN搭載のWindows Mobile携帯をどう扱っているかを見てみよう。
日本を除く世界中の携帯電話キャリアの多くは、Windows Mobile携帯に対して特にそれほど拒否反応は示していない。というより、Windows Mobile携帯に対して世界各国の携帯電話キャリアは拒絶も禁止もできないのだ。
なぜなら、日本と韓国を除く多くのGSM携帯電話圏の場合、携帯キャリア(携帯電話会社)と携帯電話メーカーとは、SIMカードという存在(電話番号やアドレス帳を保存している親指大の小さなチップ)によって、ネットワークサービスの供給と電話機販売の役目が明確に分かれている。携帯キャリアは携帯電話本来の通話料でビジネスをおこない、携帯電話そのものは(基本的には)販売しない。携帯電話メーカーはSIMカードをサポートした携帯電話を、自らの販売網を使い直接エンドユーザーに販売する。これが世界の常識である。
そのためWindows Mobile携帯ユーザーが携帯キャリアのパケットデータ網を使わず、PDAのようにActiveSyncでPCのコンテンツをUSBケーブルで携帯電話側に転送して楽しんだり、無線LAN経由で映画を見たりしても、携帯キャリアにはそれを禁止する術がないのだ(ただし欧州でも、ボーダフォンを中心にキャリアが電話機販売も行う「日本型モデル」への移行が起こりつつある)。
ところが日本の携帯電話キャリアの場合、あらゆる電話関連サービスの供給と電話機の販売の両方を行っている。したがって、自分のビジネスモデルが壊されるようなWindows Mobile携帯電話を発売するはずはなく、そもそもそのような携帯電話が世の中に存在することを知らせようなこともしない。インターネットコンテンツやサービスをそのまま携帯電話で利用できるようなWindows Mobile携帯に、既存の携帯コンテンツビジネスを壊されるては困るからだ。
さらにWindows Mobile携帯でSkypeが動いてしまうと、携帯コンテンツビジネスだけでなく本業の音声通話代も激減してしまう。日本の携帯キャリアがSkype携帯電話を阻止すべき理由がここにある。
以下、日本の携帯電話キャリアからみたWindows Mobile+Skype+無線ブロードバンドの問題点を簡単にまとめてみると……
上記の要点を私が使っている「O2 XDAIIs」にあてはめてみよう。
無線LANエリア内ではインターネットアクセスもSkypeによる音声通話もすべて、携帯電話キャリアの電波に関係なく実現できるから驚きだ。「O2 XDAIIs」を日本で使う場合に困るのは、GSMしか搭載していないため、普通の携帯電話としての通話ができないという一点のみである。
もし私が「O2 XDAIIs」ではなく、今年の秋に発売されるであろうW-CDMA対応の「HTC Universal」を購入すれば、日本の携帯キャリアのW-CDMA USIMカードをそのまま利用できる可能性がある。こうなると、普通の携帯電話とSkype携帯電話の両方の機能を使えることになるだろう。
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