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» 2005年06月21日 21時00分 公開

Skypeと無線ブロードバンドが及ぼす通信業界への影響(6/7 ページ)

[清成啓次,ITmedia]

電話会社や国家によるSkype規制

 以上のようにSkypeはすでに多くのPCプラットフォームをサポートし、PDAや携帯電話でも動作し、電話の仕組みそのものにも影響を与えるような存在になってきた。これが将来、電話会社、携帯電話会社にとって大きな脅威となるのは言うまでもない。現在、最もSkypeの影響を受けているのが電話料金が高い国際電話である。

 これまで日本から平日昼間で1分100円〜200円かかった国際電話が「何時間会話しても0円のSkype」との競争に巻き込まれている。おまけにSkypeは国際電話より音質も良く、5人までの(実際にはもっと大人数でも可能だが)電話会議さえ0円でこなしてしまうのだから、競争というよりビジネスモデルを崩壊させられている。こうなると電話会社だけでなく、電話会社の高収益から税金を吸い上げている国家も困ることになり、今後この問題は世界各国で大きな議論になるだろう。

 現実にインド、パナマ、カタール、メキシコなどの国ではSkypeやVonageを含むVoIP電話サービス全体を国の命令で規制しようとしており、メキシコでは実際にサービスプロバイダーに対してSkypeサイトへのアクセスを禁止する措置に出た。これらの国々の電話会社の多くは国営だったり、その国の権力者の独占事業なので自分のビジネスが侵されるVoIPサービスに対しては命令一つで禁止措置が取れるからだ。

 ただし他のVoIPサービスと違い、SkypeはP2Pで構築されたオーバレイネットワーク上で動作しており、Webが見られる環境ならばどこでも使えてしまう。したがって、Skypeアカウントをすでに取得している利用者は規制後も問題なく使えるはずである。実際、パナマではSkypeサイトへのアクセスが規制されたためSkype本体プログラムとSkypeアカウントをメールで「密輸」するようなビジネスまで始まっているというから面白い。

 いずれにしろ今後、この問題は「インターネット対国家」「VoIP対電話会社」というレベルでも大きな論点になるだろう。結果が注目される。

Skypeよりはるかに影響が大きい無線ブロードバンド

 さて、冒頭部分で地球のマグマを「インターネット」に、巨大地震を「無線ブロードバンド」に、大津波を「Skype」に例えたが、Skypeは表面的には通話料収入の減少という点で通信業界に影響を与える存在に過ぎず、ここ数年で既存の電話網を消滅させるようなドラスティックな存在にはならないだろうというのが私の結論である。

 もちろん、海外との取引の多い企業がSkypeを導入し、月に30万円程度かかっていた国際電話代を10万円に削減する、といったことは可能だが、その程度の影響で留まるだろう。Skype社自身も「Skypeは既存電話網を置き換えるようなものではなく、第二の新しいスタイルの電話として使って欲しい」といったコメントを発表している。

 電話会社や通信業界にとって、それよりはるかに影響が大きいのがIEEE802.11a/b/gやIEEE802.16(WiMAX)規格の「無線ブロードバンド」の存在である。無線ブロードバンドの普及次第では、通信業界にSkypeがもたらす以上の影響が及ぶ可能性がある。

 現在、ほとんどのノートPCには802.11xをサポートした無線LANチップが標準搭載されている。自宅や会社にADSLなり光ケーブルを引き、そこに補助的に無線LANアクセスポイントを設置してノートPCやPDAをモバイルで使っているというケースが多い。この場合、主役はあくまでもADSLや光ファイバーの固定ブロードバンドであり、無線LANは補完的な役割で使われている。

 また「Yahoo!BBモバイル」や「無線LAN倶楽部」、「Mzone」などのいわゆるホットスポットも増えてはきているが、これらはまだ無線LANが使える「点」にしか過ぎず、「面」への展開が今後の普及の課題となっている。また、利用料金は多少下がったものの、現在の「点」程度のカバーエリアで月額1500円〜2000円という料金も、本格的な普及を望むには割高感がある。なぜなら使える場所が「点」でしかないから、そこに行けなければ使いもしないサービスにお金を払っているだけということになってしまうからだ。

 しかし今後、この状況が一変しそうなサービス発表が6月15日にあった。ライブドアがパワードコムと提携し、「D-cubic」という無線LANサービスに参入すると発表したのだ(関連記事)

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