Sunが語るOpenSolarisとオープンソース・コミュニティーの本質：Interview（2/2 ページ）

[渡邉利和, 西尾泰三，ITmedia]

クレア　LinuxとOpenSolaris以外にも、FreeBSDなどのオープンソースOSプロジェクトがありますが、それらと比較した際のOpenSolarisの特徴としては、DTraceやSolarisコンテナ、予測的セルフヒーリングなどの先進的な機能が実装されている点が挙げられます。基本的なコンセプトとしては、バイナリに後方互換性（Backward Compatibility）があること、拡張性があること、可用性があること、といった特徴があります。

ステファン　Linuxが好きな人に、OpenSolarisを押しつけるつもりはありません。Solarisのコミュニティーの中でも、今回のオープンソース化を歓迎し、大喜びしている人がいる一方、冷静というか現実的というか、そういう態度を取り、どちらの陣営にも与するつもりはなく、複数のコミュニティーと等距離を保つという人もいます。OSに関して複数の選択肢が提供され、相互に競争が起こることは、コミュニティー全体のメリットにつながると考えています。

CDDLについて

ITmedia　OpenSolarisのコードのほとんどはCDDL（Community Development and Distribution License）にもとづいて公開されています。CDDLはSolarisのエコ・システム内でのみの比較的「閉じた」ライセンスなのでしょうか。

ステファン　OS間でのコードの共有は、それぞれのOSがどのようなライセンスに基づいて公開されているかに影響を受けます。Linuxとの関係について言えば、CDDLとGPLは相容れません。ご存じのように、GPLに基づいて公開されたファイルは、他のファイルとマージする場合に、相手方のコードもGPLに従うことを求めているからです（関連記事参照）。

　ただし、OpenSolarisのプロジェクトに参加した人がLinuxの開発には参加できなくなる、ということはありません。CDDLはあくまでも「ファイルベースのライセンス」です。あるファイルがCDDLに基づいて公開された場合、このファイルを他のライセンス、たとえばプロプラエタリなライセンスやMPL（Mozilla Public License）、BSDライセンスなどで公開されたファイルとリンクすることも可能です。GPLファイルだけは例外で、もともとのライセンスであるCDDLをGPLに変更する必要が生じてしまうため、これはできません。

コミュニティーに対する考え

ITmedia　OpenSolarisのコミュニティーとオープンソース・コミュニティーはどのような関係にあるのでしょうか。

クレア　オープンソース・コミュニティーと呼ばれているものの中には、ApacheやPerlなどさまざまなコミュニティーが並立しています。オープンソース・コミュニティーとは、これらの「コミュニティーのコミュニティー」なのです。1つの一枚岩的なコミュニティーがあるのではなく、価値観や開発スタイル、ライセンスモデルなどが異なるさまざまなコミュニティーが存在しているのです。

　Solarisをオープンソース化したことで、これらの既存のコミュニティーに対して追加的な価値を提供する形になるのではないかと思います。これら既存のオープンソース・コミュニティーの活動成果がSolarisの開発スタイルを変革する要因になったということもあるので、LinuxとOpenSolarisのコミュニティーが分断されていると考えるよりも、OpenSolarisにはオープン化したことに伴う新しいメリットがあり、この結果既存のオープンソース・プロジェクトに新たな価値が加わり、ソフトウェア開発の側面からもさらに革新が促進されることになると考えています。

　OpenSolarisでは、もともとのSolarisコミュニティーに加え、オープンソース化されたことで、ビジネス、研究、システム構築など、さまざまな観点からさらなる革新を実現したいと考える人たちが新たに加わってくれるものと確信しています。

ITmedia　SolarisとOpenSolarisはどのような関係となっていくのでしょう。

ステファン　Sunは将来にわたり、高品質で、安全で、安定した「Solaris」というOSを提供し続けていくことを約束しています。同時に、将来のSolarisは、OpenSolairsプロジェクトの開発成果に基づくものになります。しかし、完全に同一のものとは限りません。たとえば、OpenSolarisに組み込まれた機能のうち、Sunからみてまだ安定性に欠けると考えられるものや、まだ未完成だと考えられるものは、Solarisには組み込まれないということもあり得ます。