ファンタジスタはロボット――ロボカップ2005開催(2/2 ページ)

» 2005年07月15日 03時16分 公開
[西尾泰三,ITmedia]
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ロボカップレスキュー

 ロボカップサッカーに比べるといくぶん地味な印象もある「ロボカップレスキュー」だが、災害現場で救助に役立つ自立型ロボットの開発を推進する活動としては、よりわたしたちの実生活に密接に絡んでいる。ロボカップサッカーがエンターテインメントの要素を多く持つのとは対照的だ。

 そのロボッカップレスキューは、「レスキューロボット」と「レスキューシミュレーション」の2つのリーグから構成されている。このうち、レスキューロボットリーグでは、昨年の世界大会で優勝した桐蔭横浜大学のチーム「Toin Pelican」の連覇に期待がかかる。

 ロボカップレスキューにおけるポイントとして「走破性能」「自動地図作成」「被害者の状態判別」などの機能が挙げられる。そもそも、ロボットレスキューが必要となる現場を考えると、被災地などにおけるレスキューの第一段階だと言える。災害現場において、2次災害の危険がある場所に対し現場の指揮官は自分の部下を向かわせることは、仕事とはいえためらいがあるものだ。それが被害者がいるかいないか分からないのであればなおさらだ。そうしたときにまずレスキューロボットでレスキュー活動を行うわけだ。そのために必要なものが前述の3つのポイントとなる。

 このうち、走破性能は年々技術もこなれてきたこともあり、本大会でのポイントは自動地図作成やそこに被害者をどうマッピングしていくかなどの技術が問われていると言える。参加チームの中には3D空間の把握まで可能にしているチームも出てきているが、現実的なところでは、2Dのマップ作成に各種センサーによる被害者の状態判別がひととおりできてきたといったところだ。

レスキューロボットの会場。起伏のあるマップのところどころに人間の手(マネキン)が見える(クリックするとマップを動くロボットが表示されます)

 今回、Toin Pelicanもうわさにたがわぬ安定した実力を見せているが、伏兵とも言える存在が彼らの座を脅かしている。予選でトップのスコアを出したのは韓国の「ROSCUE」だった。また、Toin Pelicanはどちらかと言えばハードウェア志向のロボット作りをしているが、電気通信大学の「SINOBI」チームはソフトウェア志向のロボット作りをしているという意味で両者の対決にも注目が集まる。

「SINOBI」チーム 「SINOBI」チーム。どのチームもおそろいのTシャツやつなぎを着ている

 13日の予選では、不意にロボットが暴走してしまうなどのトラブルにも見舞われたSINOBIだが、バックヤードにいたSINOBIチームの表情は明るい。電気通信大学の亀川哲志氏は「ソフトウェア的なトラブルではなく、無線部分のトラブルだったので」と振り返る。こうした大会においては、研究室で成果を上げているものをそのまま持ってきたいところだが、実際は限りある無線の帯域をシェアしなければならないため、研究室での環境とは若干異なることもある。そうした事情も影響しているようだ。

 そしてこのSINOBI、日本SGIとの産学連携で進められているチームでもある。ほかのチームも多かれ少なかれ企業の援助を受けているが、それは援助といったレベルで産学連携との線引きが難しい部分がある。一方、SINOBIでははっきりと産学連携のスタンスが取られているが、亀川氏は、「産学連携というと、ハードウェアの提供などを想像されるかもしれないが、実際のところ、一番助かっているのは人材の交流があること。必要に応じて日本SGIの優秀な社員にサポートしてもらえることで、研究室に閉じない研究が行えている」と産学連携のメリットを話す。一方日本SGIもそうした成果物としてBlackShipとその開発環境など世に送り出すなどお互いにとって良い関係が生まれている(関連記事参照)

BlackShip 電通大との産学連携の結果誕生した「BlackShip」

 13日の予選を終え、前述のチームはすべて予選を突破。今年もToin Pelicanが勝利を手にするのか、それともSINOBIが巻き返すのか、はたまた第3勢力が覇権を握るのか。決勝ラウンドに注目したい。

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