ミルズ 数えたことはありませんが、57種類あるとしても、その中にはきっと多くの重複があると思います。微妙なものも数多く含まれています。この数字は、数種類のライセンス方式を反映しているのではないかと思います。今後も複数のモデルが存在することになるでしょう。つまり、世界が1つのライセンスモデルで統一されるという状況は考えられないということです。複数のライセンス方式が存在することで、必ずしも困るというわけではありません。いわば当然のことですから。
―― GPL採用の呼びかけについてはどう思いますか?
ミルズ HPが8月9日に「だれもがGPLを採用すべきだ」と主張した件に関するご質問だと思いますが、そういったことは絶対に起こり得ないでしょう。現在、人気のある有力なライセンス方式は幾つか存在します。これらは2つの主要グループに分けることができます。1つはGPLライセンスです。このライセンスは、GPLでプログラムをパッケージングするというのは何を意味するのか、またGPLライセンスに基づく製品で文字通りパッケージングされたプログラムをオープンソースとして提供する義務に関して明確に規定しています。
もう1つの代表例がApacheライセンスですが、これには多数の亜種が存在します。これは実際、業界で広く利用されているライセンス方式です。ほかの各種ライセンスと同様、当社のライセンスもこれによく似ています。このライセンスは、あらゆるコードの公開に関してそれほど厳しい制約を課していません。このライセンスが適用されるコードが製品に含まれている場合、その製品に含まれるそれ以外のあらゆるコードをオープンソースとして公開する義務はありません。
―― IBMが立ち上げたEclipseプロジェクトは、独自のライセンス方式を採用していたのではないですか?
ミルズ あれはApache的なモデルです。GPL的なモデルではありません。このプロジェクトにはさまざまな組織が参加し、そのライセンス方式もさまざまです。独立した組織に対して、彼ら独自のライセンス方式を放棄してもらいたいとはなかなか言えません。
また、あらゆるソフトウェアベンダーは、それぞれの製品に独自のライセンスを採用しています。ユーザーはこういった状況に対応するのに慣れています。要するに、商用ソフトウェア企業から提供されている数万種類のライセンスの上に、ひとかたまりのオープンソースライセンスが存在するというのが実状です。だれと話をしても、「この世界には契約が多すぎる」とか「弁護士が多すぎる」とこぼしますが、われわれはそういった世界に住んでいるのです。
―― Solarisのオープンソース化に関するSunの手法には反対なのですか?
ミルズ Sunは自社のビジネスを拡大する方法を模索しているのです。彼らがオープンソース化を進める理由もそこにあると見ています。この戦略が彼らの企業としての財務基盤にどんな影響を与えるかは分かりません。
複数のライセンスが存在するのを問題視するのは、一種ばかげたことであるように思えます。なぜ、車には何百種類ものモデルが存在し、さまざまな色のバリエーションがあるのでしょうか? そんなことは当たり前ではないですか。人間というのは非常に創造性に富んでいます。人々は選択を好みます。さまざまなアイデアも思いつきます。物の見方もさまざまです。ビジネス面および経済面で合理的に考え、価値を提供しようとすれば、多様性を追求するのは当然なのです。
―― つまり、パネルディスカッションでオープンソースライセンスの増殖に反対したHPやOSDLとは決別するということですね?
ミルズ 彼らの考えは願望に基づくものだと思います。「同じようなものばかり、なぜそんなにたくさん必要なのか?」というわけです。「57種類(のライセンス方式が)あり、そのうち40種類が非常に似通っているのであれば、これらの40種類を同じライセンスに統一すればいいではないか。これらのライセンスを所有している40の団体が集まって話し合いを行い、どれも本質的に同じだから統一しようということになれば、素晴らしいではないか」という考え方です。
―― あなたはこの問題に取り組まないのですね?
ミルズ ええ。取り組むつもりはありません。わたしの時間と労力を費やすだけの価値がないからです。
―― 特許改革の必要性に関する考えを聞かせてください。
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