OpenOffice.org 2.0はOffice 12に影響するか月刊「OpenOffice.orgコミュニティ通信」――10月号(2/2 ページ)

» 2005年10月12日 20時42分 公開
[可知 豊,ITmedia]
前のページへ 1|2       

OpenOffice.orgのコミュニティーマネジャーが来日

 今月は、OpenOffice.org関連のイベントもいくつか開催されました。筆者は9月17日、「オープンソースカンファレンス2005 Tokyo/Fall」にOpenOffice.org日本ユーザー会として参加しました。

 このイベントは、オープンソースに関わる人たちの情報交換と相互交流を目的としたもので、東京では春に続いて2回目の開催で約800名の参加者となりました。OpenOffice.org日本ユーザー会としては、バージョン2.0のほかに、USBメモリ起動のOpenOffice.orgを展示しました。

 一方海外では、9月28日から30日までスロベニアで「OpenOffice.org Conference 2005」が開催されました(関連リンク)。OpenOffice.orgについての国際会議であり、開発者/ビジネス利用者/ユーザーなどが集い、OpenOffice.orgの現状と将来について議論しました。一般が参加できる29日には、Sun MicrosystemsのWeb技術担当ディレクターのティム・ブレイ氏が、「オフィススイートの未来」と題する基調講演を行いました(関連リンク)。スライド/ビデオはこちらです。

 なお、10月28〜29日に開催される「関西オープンソース2005」では、OpenOffice.orgのコミュニティーマネジャーであるLouis Suarez-Potts氏が来日し、プレゼンテーションを行う予定です(関連リンク)

オフィススイートの未来はどちらだ?

 この記事を書くにあたり、編集担当に「最近の情勢から、OpenOffice.orgはマイクロソフトの次期Officeにどんな影響を与えると思いますか?」と質問されました。後半では、この話題について考えてみたいと思います。

 そうとはいえ、筆者は基本的に一介のライターであり、OpenOffice.orgコミュティでは日本の広報担当に過ぎないです。OpenOffice.org母体に対してほとんど影響力を持っていないことを付け加えておきます。また、マイクロソフトは、次期Office(開発コード、Office 12)については、同社お得意の情報を小出しにするマーケティングを始めていますが、リリースされるのは1年以上先の話です。それまでにどう状況が変わるかを予想するなど容易ではないところです。

 さて、OpenOffice.orgは、Office12にどのような影響を与えるのでしょうか?

 すでに、Microsoftは、Office12でPDFファイルをエクスポートする機能を搭載すると発表しています(関連記事)。同様の機能を持つものとして、Windowsの次期バージョンに搭載されるMetroというフォーマットがありますが、こちらが登場するのもかなり先の話です(関連記事)

 OpenOffice.orgでは、バージョン1.1からPDFエクスポート機能を装備しています。もしかすると、この展開が影響を与えているのかもしれません。同時に、マイクロソフトが柔軟に方針を変えてくるという証明でもあります。

 一方、OASIS OpenDocumentはサポートしないと表明しているようですが、それも今後1年あれば変更される可能性が無いとは言い切れません。

 それでは、Microsoft Officeの課題をもう少し別の視点から見てみましょう。筆者は、Office 12での注目点は、古いコンセプトと新しいコンセプトのせめぎ合いだと考えています。Office12にとって最大のライバルは、OpenOffice.org 2.0でも一太郎でもなく、Office 97やOffice 2000といった従来バージョンのオフィススイートです。

 現在のオフィススイートは、ほとんどの場合、ワープロや表計算、プレゼンテーションといった文書作成ツールとして使われています。Office 95からOffice 2003にかけて、各ツールの機能や使い方を共通化するといった統合は進んできました。しかし、その使用目的はそれほど変わっているように見えません。

 一方で、オフィスワークで使われるパソコンを取り巻く環境は、この10年で大きく変化しました。一番大きな変化は、パソコンが1人1台が当たり前になったこと。そして、ネットワークでつながったことです。その結果、情報を効率よく配布したり共有したり、それを元にして協同作業を進めることが可能になりました。現在、このようなネットワークの活用方法は、メールや電子掲示板、グループウェア、CMSなどを使って実現しています。

 新しいコンセプトのオフィススイートは、これらグループウェアなどとの連係をさらに緊密にするようですが、現状では成功していません。マイクロソフトは、2年前から(情報を小出しにするマーケティング手法で、実際にはもっと前から)Office 2003をMicrosoft Office Systemとしてアピールをしてきました。このOfficeSystemの記事を読んでみれば、元となるコンセプトはOffice 12でもそれほど変わっていないことが分かります(関連記事)

 オフィススイートの古いコンセプトと新しいコンセプトのせめぎ合いは、機能の○×比較ではありません。

 ユーザーが道具の使い方を変化させて、もっと効率のよい作業方法を採用できるかどうかにあります。つまり、Office 12の新機能が活かされるかどうかは、ユーザー次第なのです。

 さて、OpenOffice.orgはどうでしょうか? グループウェアなどとの連係はXMLベースのフォーマットにより技術的には可能です。しかし、現状ではこのような連係機能はほとんど盛り込まれていません。将来盛り込まれるとしたら、これまでの技術を採用する方向から考えて、特定のツールを対象にしたものではなくオープンな標準をベースに多くのツールと接続可能するでしょう。

 現状では、OpenOffice.orgの使い方は文書作成ツールの枠に収まっているように見えますが、一番インパクトがあるのは、OASIS OpenDocumentというオープン標準の文書ファイルフォーマットでしょう。OpenOffice.orgは、このフォーマットを作成するツールのひとつとして人気を集めていくことになりそうです。ほかの選択肢として、StarSuiteもありますし、2006年夏にはジャストシステムから一太郎をOASIS OpenDocumentに対応させる追加ツールがリリースの予定だと聞きます。

 ここに、Offcie12との方向性の違いがあります。もしもOpenOffice.orgがOffice 12に影響を与えるとしたら、このファイルフォーマットが無視できないほど多くの団体や企業で採用された時でしょう。日本でも、官公庁がこのファイルフォーマットを採用すれば、その影響は非常に大きなものになることが想像に難しくありません。現在、OSS推進フォーラムなどを通じて、日本政府はオープンソースに前向きに取り組もうとしているので、かなり可能性のある次元の話となっています。その場合には、Office 12にも、OASIS OpenDocumentファイルを扱えるようにする追加するツールが登場するかもしれません。

 将来性について妄想してみましょう。

 たとえば、Microsoft Officeに対応したグループウェアについて考えてみます。このグループウェアは、実は内部にOpenOffice.orgを丸ごと搭載しており、OASIS OpenDocumentに変換してから情報を取り出したり、Office 2000のファイルをPDFに変換してくれる、などという構造になっているかもしれません。この場合には、Microsoft OfficeとOpenOffice.orgが共存することになります。さらには、このようなグループウェアの付加機能として、いちいちインストールしなくてもOpenOffice.orgが動作するという日が訪れるかもしれません。先日話題になったGoogle Officeが登場するとしたら、こんな形になるのでしょうか。有志の登場も待たれます。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ