「下請け」から抜け出すIT戦略――親会社は顧客に数倍の見積もりを出していた!「IT経営百選」に見る理想の中堅企業像(1/4 ページ)

経済産業省と情報処理推進機構(IPA)は中小企業のIT化支援を目的に、2004年8月に「IT経営百選選考委員会」を組織した。そのいきさつと選定結果が「WPC EXPO 2005」で紹介された。

» 2005年10月28日 08時59分 公開
[宍戸周夫,ITmedia]

  宍戸周夫

 大企業であれ中小企業であれ、企業と名のつく限り、何よりもビジネス戦略が重要である。情報システムを構築するに当たっても、まず自社のビジネス戦略を明確に打ち出し、それに対して最適なツールを導入することがポイントになる。

 当然のことだが、単に最新のITを導入すればいいという問題ではない。こだわりのビジネスモデルを構築し驚異的な売上高経常利益率を生みだして、「IT経営百選」で表彰されたような全国の中小企業の事例を見ても明らかである。

 前回に続いて、WPCフォーラム2005で行われた経済産業省商務情報政策局の野口正情報化人材室長の講演を元に、中小企業IT化の秘策を探る。

すぐれた技術力に先進ITを融合

 中小企業のIT化を成功させたことで知られるのが、東海バネ工業(大阪市)だ。“多品種微量生産”で「どんなバネでも作ります」というのがうたい文句の会社。1ロット平均5個というバネの生産を年間約3万件受注している。もともと技術力はある会社だが、かつては大量の在庫を抱え、また顧客が限られていた。

 そこでWebマーケティング・グループを立ち上げ、全国規模で新規顧客を開拓したところ、一挙に顧客を10倍に増やすことに成功した。現在、登録顧客は数千社に及ぶが、その販売履歴データを蓄積して、不定期のリピートオーダーもスムーズに処理できる体制を整えている。

 そのため、取引実績のある顧客から高い信頼を得て、毎年約700社とはコンスタントに取り引きするという状況を作り上げた。年間の受注金額がトップの顧客でも全体の8%弱という状況で、特定の企業の下請け的体質からは完全に脱却している。粗利は約40%という優良企業だ。

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