インタビュー
» 2005年10月31日 12時09分 公開

Interview:たった2日でLinuxカーネルの最高峰が味わえる「Linux Kernel Conference 2005」

国内最高峰のLinuxカーネルイベント「Linux Kernel Conference 2005」。今回で5度目となるLKCの生い立ちや見どころなどを佐渡秀治氏に聞いた。

[西尾泰三,ITmedia]

 国内最高峰のLinuxカーネルイベントとして知られる「Linux Kernel Conference 2005」(11月10、11日:青山ダイヤモンドホール)の開催が迫ってきた。今回で5度目となるLKCの生い立ちや見どころなどをLKCの立ち上げ時から企画を行っているOSDN(Open Source Development Network)の佐渡秀治氏に聞いた。

ITmedia Linuxカーネルに特化したイベントは珍しいような気がします。そもそもLKCが開催されるようになったのは何故なのでしょう?

佐渡 確かに珍しいですね。規模や内容に差はありますが、カナダのオタワで毎年7月あたりに開催されるOttawa Linux Symposium(関連記事参照)のほかはLKCぐらいかもしれません。そもそもLKCが開催されたきっかけは、最近ではそのオタワのイベントに日程を合わせて開催されるようになってきたLinux Kernel Developers Summitという完全招待制のイベントと関連しています。

 このイベントは、リーナス氏を筆頭に重要な役割を果たしているLinuxカーネル開発者や、そのときどきで重要な機能を担当するであろう開発者だけを世界各地から50名ほど招聘して開催されるまさしく開発者のためのサミットです。

 この一年に一度のサミットがその後一年間のカーネル開発に与える影響は実に大きいのですが、2001年3月の初のKernel Summitの際に、そのサミットでの成果を日本の開発者に伝える役割、つまり当初は報告会のようなイベントとしてLKCは企画されたのです。

 当時はまだカーネル開発への貢献度の低さといったことが一般にも指摘される状況でしたので、国内でのカーネル開発の喚起を促す意味でもまずよりコアな開発現場とのパイプを打ち込み、情報を得られる場を作ろうとしたわけです。そういうわけで2001年9月に開催した第1回のLKCでは、現在もなおKernel Summitのチェアマンを続けるTed Ts'o氏が招聘されたわけですね。ただ、この時はちょうど開催直前に911テロでTedTs'o氏がボストン空港で足止めをくらい、来日はかないませんでした。思えばこれがLKCの最初で最大の試練でしたね(笑)。

ITmedia 現在は独立したイベントになっているのですか?

佐渡 そうです。LKCは特にKernel Summitの動向に関係なく開催されています。現在では世界に誇ってよい質の高いイベントにまで成長したと思います。あとは、プレゼンテーションのデフォルトを英語にすれば世界レベルだと思いますが、これはさすがに聴衆の動員面で心配なのでそこまでは踏み込んでません。

 Kernel Summitとの絡みに関しては、今のところVAリナックスの開発者が毎年参加していることもあり、人および内容はつながっていると言えるかもしれません。

 Kernel Summitが縁でその数カ月後のLKCに海外の開発者が招聘されることは今までよくありましたし、逆にLKCでの出会いが世界の50人しか参加を許されないKernel Summitに招聘されるきっかけとなるという例もあります。LKC2003にはPaul 'Rusty' Russell氏と当時ちょうどよいタイミングでカーネル2.6のメンテナーに指名されたアンドリュー・モートン(Andrew Morton)氏を招聘しましたが、彼らがVAリナックスの岩本俊弘を気に入ったらしく、次の年のKernel SummitにてHot Plugセッションのチェアマンを彼が担当することになりました。今までVAリナックスの数名しか日本から招聘されていませんが、BSDハッカーかつリーナス氏もよく知らないような彼がセッションチェアを務めるというのは実に面白いと思った記憶があります。

ITmedia 今回のLKC2005の見どころはどこでしょう。

佐渡 今回、海外からの招待講演者は2003年に続いて2回目となるPaul "Rusty" Russell氏(IBM Linux Technology Center)と、初来日となるアンドレア・アルカンジェリ(Andrea Arcangeli)氏(Novell SUSE)の2名です。アルカンジェリ氏の講演はカーネル2.6になって大幅に変更されたメモリ管理機構の話が中心となると聞いています。

 Rusty氏はカーネル基盤の協力なテストツールであるnfsim絡みの講演を行うようですが、参加者は彼独特のハッカーとしての生き様のようなものも感じ取ることもできるのではないでしょうか。2003年のときは、彼は自分の出番以外の時間のほとんどをイベント参加者が通るような廊下に座ってノートPCで作業していました。彼はせっかくの機会なのだから1人でも多くの開発者が自分に気軽に声を掛けられるようにそのようにしたということです。このような機会が与えられる日本の開発者は恵まれていると思いますが、せっかくの機会なので参加者にはどんどん意見交換をしてもらいたいと思います。これもLKCの魅力なのです。

 日本側の講演については現時点でまだ深部の詳細を把握しきれていない部分があるのでコメントしにくいのですが、個人的にはNECのBonding機能関連と富士通の資源管理機能関連の講演には注目しています。どちらもエンタープライズ環境ではキーになる要素ですから。

ITmedia U33座談会とU33チャレンジというプログラムもあるようですが。

佐渡 そうそう、今年から新たな試みとして「若手カーネル技術者(U33)によるLinuxカーネル座談会」と「U33チャレンジ」という枠を設置しました。

 以前から、国内のOSレイヤーでは若者の声が目立たないなと感じていて、それなら若者だけが集まって好きに言い合える場所を作ってしまうかという軽いノリで始めたのがU33座談会です。一度VAリナックスのプライベートイベントでテスト的にやってみましたが、幾つか考慮すべき面はありつつもそれなりに面白い効果が期待できる試みだと思い、LKCの正式な枠に組み入れました。

 U33チャレンジは、座談会だけで閉じるのではなく、座談会で出てきた人材に対して積極的に活躍の場を与えていこうということで設けたものです。前回の座談会で「ひらメソッド」というソースコード読みの手法を提唱し、自らもカーネルコードを読み続ける生活を送っている平聡輔氏に白羽の矢を立てました。

 次回のLKCのU33チャレンジには、今回のU33座談会で人材を発掘し、このサイクルでうまくまわっていくことを期待しています。

ITmedia 何故U33(33歳以下)というラインなのでしょうか?

佐渡 あぁ、それは痛いところを。実は特に深い意味はありません。単純にサッカーではU23というのがあるなぁとか、わたしと同世代ぐらいまでは若手と呼んでも差し支えないのではないかとか、それぐらいの感覚でえいやっと決めたラインがU33ということです。しかし、一度やってみて思ったのですが、これはいいラインだと思います。ちょうど企業でそこそこ活躍しだした年代までを入れることができますので。

 また、主催者招聘という形でオーバーエージ枠も用意しています。今回は何名のオーバーエージを使うかまだ流動的ですが、NTTのサイバースペース研究所でNILFS(The New Implementation of a Log-structured File System)を開発したメンバーも参加する見込みです。

 ともあれ、LKCはカーネル関連の情報を集めるだけでなく、国内では珍しい現場のカーネル技術者と触れ合える機会です。ぜひとも多くの開発者に参加いただき、国内のカーネル開発の一助となれば主催者としては嬉しい限りです。

このほかにも、最近注目が集まっている仮想マシンモニタ「Xen」についてその仕組みや内部実装などが解説される「Xen 3.0のすべて: 内部実装詳解」などのセッションも用意されている。11月10日、11日はLinuxカーネルについて理解を深めたい開発者にとってはホットな場となるだろう。参加登録はこちらから行える。

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