「常に新しいことに挑戦したい」とソニーグローバルソリューションズの大野部門長待望! 次世代ITリーダー(3/4 ページ)

» 2005年11月07日 07時30分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 西暦2000年問題で世の中がたいへんな時期、大野氏はだれも経験したことのない、大規模なECサイトの構築を2000年までに終えなければならないという、別の意味での「西暦2000年問題」に直面していた。ソニーのグループ企業であるエンタテインメントプラスのチケットショッピングシステム「e+」(イープラス)の構築だ。非接触ICカードによるチケットレス販売、i-mode対応、プレオーダー(事前申込)制、ユーザーの嗜好に合わせたデータベースマーケティングなど、多彩な機能を盛り込み、従来型の単なるチケット販売サイトとは一線を画した新しいエンタテインメントビジネスシステムへの取り組みだった。

未知のことも素早く学ぶ

 当時はまだ、本格的なECサイトが少ない時代。もちろん大野氏自身も大規模なECサイト構築は初めてだった。

 「上司から“大丈夫か”と聞かれても、“大丈夫です”と言うしかありませんでした」と大野氏は笑う。

 インターネットの要素技術は既にあったので、それを組み合わせるのだが、何しろ経験がなかった。

 「正直だれもやったことがないので分からないんです。しかし、“ダメです”と言ったらやらせてくれません。私の言葉を信じてやらせてくれたのも、上司のリーダーシップですね」(大野氏)

 新しいことにチャレンジし、経験が出来てしまえば、それを次に生かすことができる。ソニー・コンピュータエンタテインメントのPlayStation.comなど、さまざまなグループ企業のECサイト構築プロジェクトに彼の経験は生かされた。

 ソニーで大野氏が取り組んだプロジェクトは、業務系以外のアドホックな仕組みが多かった。業務に関するノウハウや経験も必要だが、未知のことを学ぶスピード、新しいものを理解して自分のものにしていくスピードは大切な力だと大野氏は話す。

 「いかに自分のものにしていくか、それがそのシステムの仕組み、ビジネスの出来にかかわってくる」(大野氏)


ITmedia どうすれば短期間で理解して自分のものにできるのですか。

大野 それは一言では難しいですね。ただ、素人であることの優位性もあります。物事を変えたいとき、既存のことを知っていることも大切ですが、素人であるがゆえに発見できる問題点や課題もあります。「自分は素人だからダメ」ではなく、「自分は素人だ、だから既に知っている人にない何かができるんじゃないか」、そう考えて仕事をすればいいんです。


 業務が分からないことが欠点のように指摘されることが多い。もちろん、知らないままではダメだが、理解に努め、知らなかったがゆえに発見することも大切だという。

失敗は次につながる

ITmedia 常に新しいことに挑戦すれば失敗も増えますね。

大野 新しいことをやらないで失敗するより、挑戦して失敗した方がいいと思います。その失敗は次につながるからです。


 例えば、Javaはオブジェクト指向言語だから、部品化して再利用していけば、システム構築が迅速になり、かつコストも削減できるといわれている。「言葉では簡単ですが、それがなかなか難しいのです」と大野氏。なぜ難しいのか? どうしたらできるのか? ソニーグローバルソリューションズは試行錯誤を繰り返しながら方法論をつくりあげてきた。

 「オブジェクトとしての部品の共通化と人の頭の中に残るノウハウやプロセスの共通化という、見える部分と見えない部分の2つの共通化が生産性にかかわってきます。これまでプロジェクトの中では共通化されてきましたが、より広い範囲で共通化しようとすると難しい課題にぶつかってしまいます。なかなか全社の資産になりませんでした」(大野氏)


ITmedia 直面した課題とは何でしょうか。

大野 われわれは大きな組織でもないため、さまざまなITベンダーとの協業によってシステムを構築しています。ITベンダーには当然、自前の方法論があります。彼らに対して、われわれの方法論を使ってほしいと言っても、彼らも方法論には多大な投資をしています。彼らにソニーグローバルソリューションズの方法論を採用してもらうには、彼らに理解してもらい、納得してもらう必要があります。もちろん、社内の人たちも同様です。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ