Sunがオープンソースを大学へ(2/3 ページ)

» 2005年11月10日 21時04分 公開
[japan.linux.com]

コードは誰のもの

 GELCの念頭にあるのは、主としてK-12(幼稚園から第12学年までの)教育と、オープンソースの周囲に存在するオンライン教育コミュニティーだと言う。また、Sunには「Solaris University Challenge」計画もあり、こちらは高等教育の場にオープンソースを持ち込むことを目指している。Solaris 10とOpenSolarisを使う参加者とその所属機関に、現金とSunの技術を供与するという内容である。

 Sunの高等教育市場開拓マネージャー、Jay Visvanathan氏によると、大学にはメインフレームとMicrosoft ITによる囲い込みが目立っていて、コントロールがきかず、アカデミックコミュニティー内部にも懸念の声が大きい。SunのUniversity Challenge計画はその声に応えようとしたものだ、と言う。「個々の大学がITを使って差別化を図ろうとしている高等教育の場で、囲い込みは許されませんよ。Univetsity Challengeは、コミュニティーに『革新のための10億を』というSunのモットーの具体的表現です。今回は、たまたま教育コミュニティーが対象になっただけです」

 オープンソースに詳しい大学関係者の間にも、教育界に対するSunの働きかけを評価しながらも、コミュニティーへのフォローがあるか、と心配する声がある。クラークソン大学の院生、パトリシア・ヤブロンスキー氏はこう言う。

 「GELCの理念は、自らへの金銭的利益を度外視してコミュニティーへの還元を目指そうということですから、オープンソースモデルに合致します。理念上は、学生と教師とオープンソースコミュニティーに大きな恩恵をもたらそうというものですからね。あとは、それが実際にコミュニティーの精神にのっとって行われるかどうかです。それが計画の成否を決定するでしょう」

 ヤブロンスキー氏は、今年のTuxMasters開発競争で栄冠を勝ち得たクラークソン大学チームの一員である。Sunらの企業が後ろ盾となって実施される開発コンテストは、技術革新の起爆剤になりうると言い、その意義を認めている。ただ、そうしたコンテストで開発されたコードが誰のもので、誰がそこから利益を得るのかという問題が残る、とも指摘する。

 「最近は、いろいろな会社が大学生向けコンテストのスポンサーになっていて、オープンソースプロジェクトを募集しています。ですから、Sunが独自のコンテストを開始するというのも、方向としては間違っていません。Sunのコンテストで1つ目立つのは、他社のコンテストと違い、学生だけでなく大学の教官やIT職員にもプロジェクトエントリを認めていることです。応募作品の多様性が増して、Sunにもコミュニティー全体にもいいことかもしれません」

 「こういうコンテストで問題だと思うのは、応募する多くのオープンソースプロジェクトのなかには、すぐに目に見えなくても、大きな革新の可能性を秘めたプロジェクトが幾つも含まれているかもしれないのに、選ばれるのはほんの1つか2つだということです。でも、選外のプロジェクトもすべてオープンソースですから、主催企業は作者になんら代価を払う必要もなく、どれでも都合よく利用できます。もちろん、大学生向けのコンテストでなくてもそうしたことは起こるでしょう。たとえば、既存のオープンソースソフトウェアコードの山をひっくり返し、利用できるものを掘り出してくればいいわけです。でも、大学生向けのコンテストの場合は、企業が積極的に探すまでもなく、向こうからどうぞと言って、目の前に送られてきますからね。さらに、コンテストの応募作品ですから、主催企業が関心を抱く特定分野のソフトウェアに限られているというのも、大きなメリットでしょうね。そう考えてくると、応募作品に適用されるオープンソースライセンス条項の内容が重要な問題になります」

 プロジェクトのプラットフォームが、CDDLのもとで提供されるSolaris 10かOpenSolarisに限定されているのも問題だ、とヤブロンスキー氏は指摘する。「特定のオペレーティングシステム/ハードウェアに合わせるというのでは、プロジェクトの多様性と応用範囲が狭められます。それに、大学への賞品が10万ドル相当のSun製品ということですから、その大学がプロプライエタリのハードウェアとソフトウェアを使いはじめるのは目に見えています。もっとも、x86用のSolaris 10をリリースするというのは、Sunにとって正しい1歩でしょうね。オープン標準の柔軟性が増します」

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