現在人気のネットサービスには、制作にどんな秘訣があるのか? サービスのトレンドを追うと、サービス指向という方向性が見えてくる。サーバ仕様だけでは分からない現代のホスティングサービスを分析しよう。
オンライン・ムック「インターネットサービスの新基準」では、現在のパートでインターネットの基盤(ホスティングサービス)について解説している。前回の記事「ネットサービスのトレンド変遷」では、インターネット全体からホスティングサービス業界の変遷を解説したが、今回は、ホスティングサービスに求められる要件を整理し、現在のトレンドはどのようなものなのか? 仕様の傾向、またその仕様がなぜ必要とされているのかを分析する。
多くの情報を整理してWeb配信を行うためには、定型化するための仕組みが必要だ。従来までのテンプレート機能を搭載するホームページ作成ソフトを利用しても、HTML出力する処理はクライアントサイド依存になっていた。
しかし、最近の傾向として目立っているのは、インターネットのサーバサイドで処理を行い、コンテンツ情報はデータベース管理することで一つの出力形態に限定させないという手法だ。その背景には、クライアントサイドでコンテンツ形態を簡素化し、Webサイトへアップロードした後で体裁を整えるという処理の分散がある。Web配信までのタイムラグを極力なくす目的があるのだ。
また、システム面に目を向けていくと、ミッションクリティカルが必須となる基幹システムの分野では、Javaや.NET Frameworkの応用が活発だ。一方、エッジな分野では、比較的構築(開発)の敷居が低いオープンソースのPHP、そしてMySQLやPostgreSQLなどのデータベースを組み合わせるケースが増えている。前者はWindows Server、後者はLinuxなどのオープンソース環境が利用されることが多い、という違いもある。
インターネット上の各種サービス(ポータルやコミュニティー)は、インターネットサーバ上で実現したWebの稼働環境で成り立っている。そのサーバに求める動作環境はここ数年で激変しており、Web配信のためのファイル保存スペースを用意すればよい、といった状況ではなくなりつつある(もちろん数ページで済ませるサービス用途の場合は、この限りではない)。
インターネットサービスを提供するサーバ環境としては、一般的にホスティングサービスであれば「占有型」と「共有型」が用意されている。前者はサーバ(ハードウェア)を“契約者が1台まるごと占有する”サービス。後者は1台のサーバで契約者が複数間借りし、“サーバのハードウェアリソースを共有する”サービスだ。
インターネット“サーバ”自体の優劣は、概して処理能力にある。言うまでもなくプロセッサやメモリ容量などに依存し、最近ではパーツそのものが低価格化しているものの、サービス内容によって仕様の違いがある。ただし、“仕様がすべて”とならないことは事実であり、これについては後述する。
海外のホスティングサーバサービスでは、サーバ仕様を詳細に明記しているところが多い(ただし、バックボーンのインフラ帯域には触れていないことが多い)。一方、国内のホスティングサーバサービスでは、Webアプリケーションを利用できる環境(PHPなど)や、データベースシステム(MySQLやPostgreSQL)などは明記されているものの、スペックまでは開示していないケースが多く見られる。
法人向けの切り口で専用サーバプランをクローズアップしてみると、契約段階でのサーバ仕様に選択肢を持たせる傾向が多いように感じる。
例えば、カゴヤ・インターネット・ルーティングの「専用サーバー・プロ」では、デルのサーバ(Pentium 4の2.4GHz、256〜512Mバイト、40〜80Gバイト)をベースにしているが、この仕様は契約時に任意のカスタマイズが可能だ。
また、ラピッドサイトの「RS-502」というコースでは、月額7万3500円からとなっているが、Xeonで3.2GHz、2Gバイトのメモリを搭載、SCSI-RAIDの146Mバイト×2という仕様が標準となっている。ファーストサーバのエンタープライズシリーズでは、月額4万9350円からだが、サーバ仕様はPentium Mの1.8GHz、メモリには512Mバイト搭載とあり、この仕様だけを見ると割高に思えるかもしれない。その代わり、このプランではRAID仕様のディスクを標準搭載としており、付帯するサービスで堅牢さをアピールして他社と差別化している。
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