Red Hatが最優先プロジェクトを発表(1/2 ページ)

Red Hatの2カ年計画では、各種フリーソフトウェアプロジェクトのほか、RHEL用の仮想化技術とステートレスLinux技術が優先プロジェクトに指定され、強力に推進されるようだ。

» 2005年11月30日 17時48分 公開
[Stephen-Feller,japan.linux.com]

 Red Hatの2カ年計画が明らかにされ(関連記事参照)、Linuxコミュニティーにとっても興味深い幾つかのプロジェクトに予算がついて、開発が進められることになった。同社がマスコミ向けに発表したところによると、2006年と2007年にはSystemTapOProfileを含む各種フリーソフトウェアプロジェクトのほか、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)用の仮想化技術とステートレスLinux技術が優先プロジェクトに指定され、強力に推進される。

 Red Hatは、顧客のためにハードウェア費用の削減を実現した。だが、それは同社が描くオープンソースアーキテクチャーの技術的未来像の半分を達成したにすぎず、今後は、さらにその先を目指すことになる。具体的には、ネットワークの構築と管理の面で費用を削減し、信頼性を高め、使いやすさを向上させる、と同社RHEL総責任者のスコット・クレンショー氏は言う。

 「ツールとその最高の使い方からなるサービスを一つのパッケージとして提供する予定です。これで、社内開発と独立ソフトウェアベンダー開発の2本立てによる分散開発が進むでしょう。コードの品質が向上し、市場に出るまでの時間が短縮されます。開発をしやすくし、開発速度を上げ、開発されるコードの品質を高める――それを実現するためのツールとサービスの組み合わせです」(クレンショー氏)

 Red Hatは、また、私企業とオープンソース開発コミュニティーとが協力関係を維持するための方法を模索しており、コミュニティーの意図に沿った作業プロセスとツール開発のモデル作りでも手助けしたいと考えている。この協力関係があれば、企業は「世界で最も大きく、最も成功している開発プロジェクト」のモデルに従い、高品質かつ高性能のコードをスピーディーに開発できる、とクレンショー氏は言う。

 社内開発プロジェクトに活力を与えるのが、例えば、アプリケーションやシステムの動作を非侵入的に分析するソフトウェア、SystemTapと、類似の各種システムツールである。SystemTapプロジェクトのWebサイトによると、SystemTapはKProbesインフラストラクチャー上に構築されており、Sun MicrosystemsのDTraceやIBMのDProbesからヒントを得ている。DTraceはSolaris上で動作するツールだが、企業顧客の関心は大きく、Linuxにも同様のアプリケーションが欲しいという声は多い。

 Red HatはOProfileにも力を入れている。これは、カーネルをリアルタイムで間断なく監視するソフトウェアで、システムパフォーマンスの調整に役立つ。同プロジェクトのWebサイトによると、システム上で実行されるすべてのコードのプロファイルを作成し、システムに関するさまざまな統計値を管理者に提供するという。もともと、CompaqのDCPIプロファイラに触発されたプロジェクトであり、Hewlett-Packardが後ろ盾となっている。ところが、カーネルの更新後、RHオペレーティングシステム上で動作しなくなったため、Red Hatが独自バージョンを開発した――とプロジェクトFAQにある。

 Red Hatが計画の中で推進をうたっているプロジェクトの一つに、その発足に同社も一役買っていた統合開発環境プロジェクト、Eclipseがある。これと並び、もともとEclipseと統合される予定だったFryskの名前も見える。Fryskについては、ソフトウェア分析の方法を従来のデバッグツールから一変させるものという期待が大きい、とRed Hat技術最高責任者(CTO)であるブライアン・スティーブンス氏は言う。

 スティーブンス氏は、Mudflapにも言及している。これはGNU Compiler Collection(gcc)の一部をなすメモリ分析ツールであり、CとC++におけるコーディングエラーをなくし、メモリリーク、ランダムグリッチ、クラッシュ、セキュリティホールを防止するという目的で設計されている。

 クレンショー氏もスティーブンス氏も、幾つかのツールへの「支援と投資」と言うにとどめており、Red Hatとして特にどのツールに関心を持っているかは言っていない。ただ、クレンショー氏には「わが社のためのプロジェクト支援という域を超える」という発言もあり、ネットワークとオペレーティングシステムを使用する上で不可欠のツールである以上、顧客に必要なものを提供するのがRed Hatの使命、というニュアンスが感じ取れる。

 「開発者の声は十分に届いていますよ」とスティーブンス氏は言う。「声の多くは、Unix/Windowsレガシー環境を一気に飛び越えるような開発ツールを求め、探しています。同時に、その要求を実現する力をオープンソースモデルに求めています」(スティーブンス氏)。

次ページ:Red Hatの将来技術を支える「3本柱」

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ