Red Hatが最優先プロジェクトを発表(2/2 ページ)

» 2005年11月30日 17時48分 公開
[Stephen-Feller,japan.linux.com]
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 Red Hatの将来技術を支える「3本柱」は、仮想化と、ステートレスLinuxと、Fedoraプロジェクトを通じて開発者に最先端のソフトウェアを生み出し続けてもらうことだ、とクレンショー氏は言う。また、Red Hatはユーザーや企業顧客と協力し、最大費用がどこで発生し、最大困難がどこに潜在するかを特定しようと努力してきた、とも言う。その結果、こうした問題のほとんどが、ネットワーク管理とハードウェアの最適使用に関係していることが分かった。Red Hatはすでに幾つかのソリューションを温めている。

 Xen仮想化ソフトウェアは、すでに以前からFedora Coreの一部として出荷されており、ユーザーによる使用、テスト、RHELでの稼動に備えた強化が進んでいる。オペレーティングシステムと「緊密に統合された」仮想化が必要であるというのがRed Hatの認識であり、その認識に基づいて「市場投入時期ができるだけ早まるよう、Linuxコミュニティーだけでなく、Xenコミュニティーにも多大な投資をしてきました」と、クレンショー氏は言う。

 「FedoraへのXen統合が進んでいますし、いずれRed Hat Enterprise Linuxにも統合されます」とスティーブンス氏も言う。「仮想化機能があれば、コンピュータグリッド全体の利用率が高まりますし、動作特性のうち敏しょう性とスケーラビリティが強化されますから」(スティーブンス氏)。

 平均的なサーバは、CPU能力の15〜20%程度しか使用していないというデータがあり、これが仮想化への動きに弾みをつけている、とクレンショー氏は言う。仮想化を取り入れれば、この値は80%以上にも跳ね上がり、「少ないハードウェアから大きな生産性を絞り出せます。要するに、少ない費用で大きな生産性が得られるということです。より速い、より良い、より安いハードウェアが現われれば、それをすぐにでも利用できます。実働までの整備サイクルなど必要ありません。なぜなら、ソフトウェアは仮想マシンに対応していて、ハードウェアには左右されませんから」(クレンショー氏)。

 費用が劇的に削減されるのは、仮想ネットワークが出現するときだ、とクレンショー氏は言う。仮想化されたネットワークによってサービス水準は極限まで高まり、ピーク時の負荷も、故障も、ダウンタイムも、ユーザへの影響など出さずに処理できる。ハードウェア分離の水準も向上し、新しいハードウェアを導入しても、アプリケーションスタックの再整備に費やす時間や資金は少なくてすむ。すべては、ステートレスLinuxへの追い風となる。

ステートレスLinux

 ステートレスLinuxの目標は、数多くのLinuxクライアントを簡単に管理することである。従来、コンピューティングには軽量(シン)クライアントと重量(ファット)クライアントという2つのアプローチがあったが、ステートレスLinuxはその「両方の良い部分だけを取る」ことを目指している。

 RHELで重視されたのは費用の削減だった、とクレンショー氏は言う。その方法を突き詰めていく中で、Red Hatは、「仮想化の時代にあっては集中化」が鍵となるという重要な事実を発見した。これが実現すれば、ネットワーク管理者はローカルハードディスクやローカルステート情報に煩わされず、効率良く情報を管理できる。必要なサポートが質的にも量的にも大幅に減少する。

 「これで操作のスケールが格段に大きくなります」と、スティーブンス氏は言う。「Linuxクライアントとサーバが何千台あろうと、その管理費用は、実質的に一つのシステムを管理するのと変わりません」(スティーブンス氏)。

 ステートレスLinuxで実現される大スケールでは、現存する性能と要求される性能、サーバの起動と停止など、さまざまな状況に応じてサーバからサーバへ柔軟に作業負荷を移動できる。従って、「仮想化と極めてうまくかみ合います」と、クレンショー氏は言う。すでにRed Hatのステートレスシステムを部分的に運転している顧客もいるが、完全なシステムの提供は2006年末と見込まれている。

 Red Hatは、すべてのソフトウェアをオープンソースライセンスの下でリリースする。従って、ステートレスLinuxを目指す同社の努力は、最終的にLinuxコミュニティー全体の利益になる、とクレンショー氏は言う。「わが社の役割の一つは、社のリソースを1つの目標に向けて集約し、コミュニティーがツールを開発しやすい環境を整えることだと思います。開発されるツールの中には、わが社のお客様にとってありがたいものもあるでしょう。もちろん、開発者コミュニティーが重宝するものもあるでしょう」

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