「60歳定年退職制度」で露呈する企業の諸問題を検証する構造改革としての2007年問題(4/4 ページ)

» 2006年01月01日 02時36分 公開
[ロビンソン,メディアセレクト]
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残された時間で何をすればよいのか?

 そこで同氏は、企業が解決すべき三つの課題を示している。一つは、必要な人材をどのように選別するか。会社が残したい人でも、定年退職者本人は残りたくないかもしれない。その反対もある。両方の思いが一致するためには、必要人数を事前に把握し、選抜基準も明確にすることだ。大部分の企業が、定年延長プログラムを計画しているが、その条件が「健康であること」「会社が必要と認めること」「本人にヤル気があること」といったあいまいな基準のままではこの問題は解決しないという。

 トヨタ自動車では「専門技能習得制度」を設けて、人材選抜の基準を明確にしている。S(25年)、A(15年)、B(10年)、C(5年)と等級が分けられた就業経験年数と、そこに必要な実践技能を明確にした上でSとAのみを残すよう規定し、今後必要な人数とどのような人材が必要かを宣言している。

 二つ目は、残した人材を囲い込む“器”をどうするか。それには、雇用延長と、新雇用機会創出の二つの方法がある(図2)が、ここで悩やんでいる企業は多いという。横河電機などはいくつかの受け入れパターンを用意し、定年退職者の希望に柔軟に対応している。

図2

 そして三つ目の課題は、残した人と現役とをつなぎ、どのようにノウハウを伝承すべきかである。自動車メーカー、マツダの「伝承道場」では、特定技能領域について、45歳以下の技能検定1級認定者を対象に、1〜2年の期間生産ラインから離れて、マンツーマンで技能伝承に専念させている。また、本田技研工業の「本田塾」では、工場のマネジメントを伝承領域として、新任管理職やライン長などが月1回特定工場に集結し、現場の改善や新規設備投資のアイデアを出す訓練を行う。

 「しかし残念なことに、これら三つの課題を解決した企業はほとんど存在していません」と大森氏は言う。

 「多くの企業は、2007年問題への危機感を高いプライオリティで感じていると話しますが、優秀な人材をその対策に回す人的な余裕がないのが本音です。この問題への即効薬はありません。今からでも、それぞれの企業がより効果的な方法を見出していく必要があるでしょう」(同氏)

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