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» 2006年01月17日 08時28分 公開

構造改革としての2007年問題:2007年問題の本質は企画力を持つ経験者の引退にあり (2/2)

[ロビンソン,メディアセレクト]
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ベテラン技術者が引退する前にすべきことは何か?

 IT業界の人材の現状を見ると、若手とベテランの間には大きな壁がある。若手技術者の現状は、最新技術の理解力と開発力はあるが、IT化を企画立案した経験に乏しい。しかも、もともと基幹業務はメインフレームでコンピュータ化されていたので、周辺業務しか手掛けておらず、本流を知らない。

 一方、高齢技術者は、最新技術の発展や進化についていけず、過去の技術の応用では、もはやシステム開発を担えないという苦悩を抱える。しかし、この世代の技術者の強みは、基幹業務のIT化の経験だ。ユーザー部門の要望を汲み取り、業務の流れを引き出してシステム化を行ってきたので、業務コンサルの能力がある。ゼロから作り上げていった能力やノウハウを、今後も有効に活用できるのではないかと森氏は考える。

 「大規模な基幹業務開発経験を持つベテラン技術者が、定年後も目利きとしてPM補佐の役割や、プロジェクトメンバーを支える役割を担ってもらうことは非常に有効です。しかしそのためには、このような人々を活用する仕組みづくりと、受け皿作りがまず必要になります」(森氏)

 ある大規模なプロジェクトが動き出したら、引退したベテランをスペシャリスト組織で迎え入れるなどの待遇や、大きなシステム開発が発生したときに、業務コンサルとして雇い入れられる職種をつくるなどの受け入れ制度作りが望ましいという。

 また同氏は、改正高年齢者雇用安定法(注1)の施行で引き延ばされる引退時期までに、基幹業務のリデザインを若手技術者とともにやってみるという方法も提案する。IT投資が許せばではあるが、そこでの交流によって若手も成長し、ノウハウは確実に伝承されるからだ。

 「結局は人間力だということを、大きな開発の経験者なら理解しています。顧客の要件を取りまとめる時に何が大事なのか、団塊の世代の人たちは自然にやっていました。その人たちが退職することで何が失われるのかを、企業も現役世代も、いま一度よく考える必要があるでしょう」(森氏)

若手エンジニアは何を学ぶべきか?

 現在後進の指導にあたる森氏は、若手技術者に向けたものづくりのための教育カリキュラムを構築中だ。プログラミングの知識を基本とし、ある課題を与えて前工程から後工程までを通して経験する研修メニューを盛り込むつもりだという。

 「団塊の世代は、講師としても力を発揮できると思います。若手が何で悩んでいるか、どの壁に突き当たって開発が進まないのかなどへのアドバイスは、長いキャリアをもったベテランなら可能です。今の開発は分業されてしまっていて、串刺しで工程を経験している人が少なくなってきています。ベテラン世代に一貫した教育についての意見を聞いて整備しておくことも、2007年問題の有効な対策のひとつといえるでしょう」(森氏)

 ものづくりの基本を知っている人たちが去っていく前に、企業は技術者の教育の必要性を真剣に考えていくべきだろう。

(注1)改正高年齢者雇用安定法:高年齢者の安定した雇用の確保等を図るため、事業主に対し2006年4月1日までに「定年年齢を65歳に引き上げる」か、「定年を廃止する」か、あるいは「定年退職者のうち希望者を嘱託等の身分で引き続き雇用する継続雇用制度を導入する」か、いずれかの対策を採るよう義務づけている。

 このシリーズでは、「ITセレクト2.0」 2006年1月号の特集「専門家が語る2007年問題の本質」を、第1回第2回第3回、第4回に分けて転載した。

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