グループウェアの選び方と新世代コラボツールコラボレーションプラットフォームの今(2/2 ページ)

» 2006年02月23日 12時30分 公開
[井上健語(ジャムハウス),ITmedia]
前のページへ 1|2       

注目されているリアルタイムコラボレーション

 グループウェアとともに最近注目を集めているのが「リアルタイムコラボレーション」だ。明確な定義はまだないようだが、音声やチャット、映像などを使って円滑なコミュニケーションを効率よくスピーディに実現する仕組みと考えていいだろう。具体的には、次のような機能が挙げられる。

  • 在席確認
  • インスタントメッセージ
  • チャット
  • 音声コミュニケーション
  • カメラを使用したコミュニケーション
  • データ(アプリケーション)共有

 MSNメッセンジャーやYahoo!メッセンジャーを使ったことのある方なら、それにビデオや音声機能(つまりはテレビ電話)を付け、セキュリティを確保した企業内メッセンジャーシステムをイメージすればいいだろう。

 「上司とわざわざ顔を付き合わせたくない」という意見もあるかもしれないが、ちょっと考えれば、リアルタイムコラボレーションが利用価値の高い仕組みであることはすぐ分かる。

 例えば、東京とニューヨークにいる社員がミーティングを開き、ホワイトボードで図やグラフをリアルタイムで共有し、資料(ファイル)もその場で配布するといったことが簡単に実現する。あるいは、東京本社で顧客に製品説明しているとき、急きょ大阪支社の担当者を呼び出し、その場で顧客の質問に対応させるといった使い方もできる。

 つまり、距離や空間という制約を取り払うことで、ビジネスのスピードや効率を大幅にアップし、新しいビジネススタイルを作り出す可能性を持っているのだ。

 企業向けとしては、日本アイ・ビー・エムのLotus Instant Messaging/Web Conferencing(Sametime)や、マイクロソフトのLive Communications Serverといったものが、リアルタイムコラボレーションを実現する製品ということになる。

 もちろん、SOHOや小規模なオフィスといったレベルなら、MSNメッセンジャーやYahoo!メッセンジャーもリアルタイムなコラボツールとして十分活用できる。ただし、試したことのある方なら分かると思うが、音質は心もとないし、何より仕事で使うにはセキュリティ面の不安が大きい。

 ところが、こうした不安を払拭するツールも登場してきた。その1つがSkypeである。

Skypeの利点と注意点

 「Skype」はルクセンブルクのSkype Technologies社が開発した、インターネット電話の無料ソフトウェアである。マイクとスピーカ、そしてインターネットが使えるパソコンにインストールすれば、Skype同士で無料の音声通話ができるようになる。

 2003年8月に公開されて以降、ダウンロード数は2006年2月の時点で2億5000万件を超えている。Skypeにはさまざまな特徴があるが、ここでは次の2点を挙げたい。

  • 音質が優れている
  • P2P型のソフトウェアである

 Skypeの音質の良さには、初めて聞いた人の多くが驚く。携帯電話よりもクリアである。Skypeを利用すると、我々は相手の声の質や息づかい、口調までも含め、“音”でコミュニケーションしているのだと改めて気付かされるだろう。

 またP2P型のため、サーバを必要としない。ユーザー登録を行うサーバは存在するが、それ以外のコミョニケーションは、サーバを経由せず、クライアント同士が直接通信し合う。

 さらに、複雑な設定をしなくてもファイアウォール越しの通信ができるのも強みだ。これは、セキュリティ面でのデメリットになるが、最近はSkypeの機能に制限を設けることで企業での導入をアシストするツールも登場している。

 ゼッタテクノロジーの「オフィスデ for Skype」は、ポリシー制御によってSkypeの利用を管理できるミドルウェアだ。情報漏えいの危険性を持つファイルの送受信行為を禁止したり、登録ユーザー以外とは通話ができないようにするなど、Skypeの管理性と安全性を高めることができる。

高性能無料電話+リアルタイムコラボレーションツールとしてのSkype

 現在のSkypeの最新バージョンは2.0だが、このバージョンからはビデオ通信機能が付いた。そのほかに、チャット、最大5人までが同時に話せる会議通話、ファイル送信など、リアルタイムコラボレーションツールとしての側面も強い。

画面2■Skypeの最新バージョンはリアルタイムコラボレーションツールとしての側面も強い

 また、有料の「Skypeアウト」というサービスを使えば、Skypeから一般の固定電話や携帯電話に電話をかけることもできる。支払い方法はプリペイド形式となる。「Skypeクレジット」と呼ばれるクレジットを購入し、使用時間に応じてクレジットが減っていく仕組みだ。料金は国によって異なるが、従来の電話を利用するよりも総じて安い。例えば、日本からアメリカの固定/携帯電話にかけるなら2.38円/分だ(アラスカ/ハワイは除く)。日本国内の固定電話にかけるなら2.66円/分、携帯電話なら17.5円/分となる。

 また、Skypeに電話番号を割り振って固定電話や携帯電話からの着信を可能にする「Skypeイン」、留守番電話として利用できる「ボイスメール」、機能を拡張できるプラグインなど、Skypeは単なる無料電話を超えるツールとして進化を続けている。

情報共有への意欲がツール導入の正否を決める

 ここまで、グループウェア、リアルタイムコラボレーション、Skypeと見てきたが、改めていうまでもなく、これらはいずれも情報共有のための道具に過ぎない。最も大切なのは、道具を使う人もしくは組織自身だ。

 いくつかの中小企業を取材した経験からいうと、こうした情報共有ツール導入の成否は、ツールの善しあしよりも、むしろ企業やユーザーの情報共有への意欲にかかっているように思える。例えば、紙による情報共用が活発であった企業なら、ツールを導入しても積極的に活用される場合が多い。逆に、情報共有が日常的に行われていないと、ツールを導入しても宝の持ち腐れになる可能性が高い。

 もちろん、ツールを入れることで情報共有への意識が高まるケースもあるが、まずは自社がどのような情報共用をしているか、しっかりと現状を認識することが大切ではないだろうか。

 この条件をクリアしているなら、ツール導入の効果は必ずあるだろう。できるだけコストを掛けたくないなら、無料または低価格で利用できるASPタイプやP2Pタイプのグループウェアをお勧めしたい。機能や速度、セキュリティ面で満足できればそのまま使えばよいし、問題を感じたらクライアント・サーバ型を検討すればよい。

 ある程度のコストを覚悟してベンダーに依頼するなら、しっかりとしたコンサルティングを行ってくれるベンダーを選択しよう。情報共有のあり方は会社によってさまざまだ。その会社にとってどんな情報をどういう手段で共有するのが有効なのかを判断し、最適な道具・システムを選択・提案してくれるベンダーが望ましい。ろくに話も聞かず、製品の機能ばかりを押しつけるベンダーには要注意だ。

 本記事が、あなたの会社の情報共有を少しでも前進させるお役に立てば、幸いである。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ